気がついたら天才心臓外科医と婚約していました


「都ちゃん。こんな時間にくるなんて珍しいね。どうしたの?」

「はい。どうしてもこのパフェが食べたくなって。」

私は大盛りの生クリームをすくって口の中に入れた。

生クリームの白い色が、仮交際初めてのデートで、白衣を着ていた広大さんを思い出させた。

一時間も前に来て、仕事を高速で終わらせ、ハンカチで汗を拭く広大さん。

「広大さん・・・」

その名をつぶやくごとに、私の心臓が締め付けられる。

私の大食いを知っても、大笑いして受け入れてくれた広大さん。

私と離れたら崖から飛び降りると言ってくれた広大さん。

どうしてだろう。

生クリームが全然甘く感じない。

こんなに大好物のパフェが、全然美味しくない。

私はスプーンをテーブルの上に戻した。

広大さんの優しい笑顔が、何度も浮かんでは消え、そして宇宙の彼方で豆粒のような星となる。

俯いた私の涙が、特大クリームましましチョコバナナパフェの上に落ちて、その形が崩れていく。

「広大さん・・・離れたくないよ・・・。」