盆踊りが終わり、園児達は金魚すくいや輪投げゲームを楽しんでいた。
私と広大さんがフランクフルトを食べながら出店を覗いていると、子供達が寄って来た。
「おじさんってお医者さん?」
「そうだ。」
「ママが病院の雑誌で見たことあるって言ってたよ?イケメンのお医者さんだから憶えてたって!」
「広大さん。雑誌に載ったことあるんですか?」
これも初耳だった。
「ああ。心臓外科医特集でインタビューされた。別に大したことは話していない。」
「ママがサインしてもらってきなさいって。」
「僕も」
「私も」
広大さんは子供達から差し出されたうちわや折り紙に、自分の名前を書いた。
そして私の顔を見た。
「言わないのか?」
「なにをですか?」
「今度他の人にサインしたら、別れますって言われるかと思ったのに。」
「それくらいで別れません。」
「言って欲しかったのに。」
欲しがり屋な広大さんに、私は言った。
「でも他の人と婚姻届にサインしたら、別れます。」
「なら大丈夫だ。絶対にサインしないから。」
広大さんはそう言って、嬉しそうに笑った。



