私は無欲ですけど、貴方だけはお断りです!

「お姉ちゃんはさぁ、何て言うかもっと望めば手に入ると思うのに、もしかして、謙虚であることがいいとか言う気持ち悪い人種なわけ?」


 こんなことを私に言うのは可愛い妹のマーガレット。



「……そんなことは無いわ、別に謙虚でありたいわけじゃないけど、特に欲しいと思わないのよ、だって貴族に生まれて、侯爵家よ、そりゃあもっと上はいますけど、十分生活に困らずに幸せじゃない、私は幸運なのよ!」




「……言いたいことは分かるけど、お姉様は私ほどではないけど美人だし、美人姉妹とまで言われているのに、何て言うか欲が無いよね!何でなのさ!」




「……別に自分がブスとかは一切思ってないけど、それで何か得ようとかは考えていないわ、だってもう十分にあるじゃない!」



「はぁー分からないなー私はお姉様と違って、もっと上を目指すわ!……流石に王太子様と婚約するとは言わないけど、私ならば公爵家の跡取りと婚約だって狙えるはずよ!」




「うん、マーガレットならきっといけるよ頑張って!」



「はぁ……普通はさぁーもう少しさー姉として妹に負けられないとか思ったりしないの?いやそういうのもウザいから、今のお姉様で助かるけどさぁ……!」



「ならそれでいいじゃないの……!」




「はぁそうですね、私はもったいないって思っただけよ、可愛い妹としてね!」




 マーガレットの言いたいことは分からなくはないけど、私は多分物心ついた時からあまり欲が無かったのだ。


 だってお父様もお母様も私を愛してくれるし、マーガレットとだって仲がいい、

 さらに執事やメイドもいい人ばかりだ。


 これ以上何を求めればいいのだろうか……?




 そんな私にも婚約者が決まった、伯爵家の跡取りらしい。



 お父様が言うに「あの伯爵家は最近勢いがよくて、さらに跡継ぎが相手なのだから、身分が1つ下とは言え、十分お前にいい相手のはずだ!……それにここだけの話、マーガレットでは断るだろうから、スカーレット、お前にこの話を持ち込んだのだ!」



 ……なるほど、お父様も私のほうが応じてくれと思ったのですね。



 若干調子がいいなぁと思わなくもないですが、家のためにこれを受けることにしました!



 ……生まれて初めてマーガレットってワガママだから得なんだなとは思いましたが。


 だってマーガレットは応じないだろうからってことで、私なら応じるに違いないなんて、お父様が気軽に思ったのですから!


 ムカつきはしないけど、そういうのって、自分から言うのはいいけど、他人から気楽に扱われて嬉しい道理は無いですからね!


 そういう意味でマーガレットの図々しさにもいい面があるのだなぁと、私も生まれて初めて思ったのであった……!


 しかし文句を言わずに婚約は応じることにした!


 だって家のためだし、不満があるわけでは無いですからね!


 お父様の言ってることも分かるし!




 ということで婚約者になるミシェル様に会うこととなった……!




 私がお会いする場所に到着すると、ミシェル様はまだ来ない……


 まぁ私が15分前についたから待てばいいと思ったが、時間を10分過ぎてもまだ来ないでは無いか!



 私は場所か日時を間違えたのかなと思って不安になり、どうしたものかと思って、それでも合ってるはずと思いながら待つと、30分遅れでミシェル様が到達するでは無いか!




「……別にこれは嫌味とかではなく、確認しておきますが、本日は10時に待ち合わせのはずでしたよね?」


 私は自分が間違えたのが不安で聞いたのだが、ミシェル様は、



「うるさいな!君は本当に性格が悪いね、そんなに僕が遅れたことをとがめたいのか!僕はね、君みたいな暇人と違って忙しいんだ!」



 などと返している……



「……そんなつもりはありませんが……」



「いいやそんなつもりだね、僕が遅刻したからってマウントを取りたい卑怯者なんだ!僕は嘘を言えば良かったよ、10時30分が待ち合わせ時間だとね!正直な僕に感謝して欲しいよ!」



 ……流石にそれを言われて、何て正直なミシェル様となるほど、私もお花畑では無い……


 何で遅れておいてここまで喧嘩腰なんだろうか……!



 私は別に謝れと要求したわけでもなく、不安だから確認しただけだと言うのに……!



 私が何を言えばいいのか迷っていると、いや困っていると……



「ああ君は嫌な奴だね、僕に図星をつかれたから黙るんだ、そうして頭の中でどう騙してやろうと企んでいるんだね!最悪だよ!僕の気分は最悪だ!」




 ……この人話が通じないのでは?



 私は生まれて初めて遭遇する困った人に困惑して、その後何を話したのか全く覚えが無いが、疲れを超えて、こんな気持ちになったのは初めてというレベルで、イライラしたのであった……!



 家に帰るとマーガレットが「ミシェル様はどうだった?」


 などと聞いてくる、私は、



「遅刻されたけど、私が時間の確認をしたら何故か私が悪いことになって、その後何を話したのかは覚えてない……!」


 とあまりなことに、言葉に出したら悔しくて涙が少し出そうになったが、



 マーガレットは激怒した!



「はぁ?何だそれ、たかが伯爵家ごときのクソガキがいい気になりやがって!」



 ……出たよ、ミシェル様って私の1つ上だから、マーガレットよりも年上なのにクソガキって……!(笑)



「……あの一応言うけど年上だからね?」




「いいや関係無いね、遅れておいて言いがかりをつけようなんてガキでもそんな情けないことをしないね!ハッキリ言って次は私も行って文句を言おうか?」




「……妹に頼るほどお姉ちゃんは落ちぶれてないわよ!」




「それならいいんだけどさぁ、マジでさぁ、お姉ちゃんがお人よしだからってそいつ絶対にいい気になってるんだわ!次舐めたことをしてみろ、侯爵家の力を思い知らせればいいんだ!」



 ……マーガレットは貴族としてのプライドが極端に高いので、格下に舐められることだけは絶対に許さない子なのだ……



 そういう意味では、私は人がいいのだろうか?


 少しばかり反省もするのであった……!



 次に婚約の打ち合わせも兼ねて会うことが決まったが、私は憂鬱であった……!


 しかし家のためにもここで投げ出すわけにはいかないんですよね……!



 そしてまずは2人で会うと信じられないことを言われたのであった……!




「僕は侯爵家のお嬢さんと結婚したいと言っただけで、君とは言っていないんだスカーレット!マーガレットが良かったね、どうして僕をこんな地味馬鹿令嬢を当てがおうとしたのか、侯爵家は僕を馬鹿にしているね!」




 ……何て返せばいいのだろうか?



 流石に文句を言いたい気分になったが、それを言ったところで良い結果になるとも思えない……!



 私が黙っていると、



「やはり君も社交界で目立つ妹に負けて、妹を妬んでいることが図星だから黙っているんだね、恥ずかしい奴だ!」



 などと罵倒してくる……



 ……私はマーガレットを妬んだことなど一度も無い!



 マーガレットは口は悪いし、態度もデカいけど、私を軽視したり決してしないことは姉である私が誰よりも知っているからだ!



 私だけでなく、マーガレットまで馬鹿にされたような気がしてきたので、少し言うことにした!



「……マーガレットはいい子だから、妬むなんてありえませんわ!」




「ふん、マーガレット嬢はきっと不出来な姉を嫌悪しているに違いないね、ああ僕は外れを引いたよ、家のために耐える僕、なんて偉いんだろう!」





 ……流石に一瞬席を立ちたくなった!



 ここまで私が言われないといけない道理はどこにあるのだろうか?



 情けなくて涙が出そうになって思わず言ってしまう!




「……マーガレットと違って私で大変申し訳なく思います……!」



 もちろんこれは純粋な謝罪ではなく、私の遠回しな皮肉もあるが……

 通じなかった!




「本当にそうだよ、僕はね今伸び盛りの有望な伯爵家の跡取りだよ、それが侯爵家の失敗作みたいな女をあてがうなんて、いくら侯爵家と言えど失礼だろう!まぁ結婚はしてやるから、僕に誠心誠意仕えるように!」




 ……この人に何を言っても無駄なことは今分かった……


 マーガレットに欲が無いとか鈍いとか散々言われる私ですら、何を言っても無駄だと確信した……!




 私が家に帰るとあまりにも元気が無いから、お母様が、



「スカーレットどうしたの?何かあったの?」



 などと聞いてくるも、ここで婚約破棄を言い出したら家に迷惑がかかるから言えないでいると……




「もしかして、結婚に不安でもあるの?」と流石お母様気づくのだが、私は馬鹿なことに、



「そういうことではなく、私が上手くやっていけるのかなと不安になっただけです!」



 と言うのでお母様は「大丈夫よスカーレットが嫌われる道理なんかあるわけ無いのだから!」


 なんて太鼓判を押してくるが、残念ながらそれが空しく聞こえたのであった……



 私が悪いのかしら?相手がおかしいのかしら?それとも両方なのかしら?



 私は無い頭で考えたのであった……!




 いよいよ婚約秒読みのため、侯爵家の者と伯爵家の者がみな顔を合わせることになった!


 別にマーガレットは付いてこなくてもいいのだが、



「そのミシェルってのがどんな奴なのか見てみたいからね!」


 と言ってついてくるのであった……



 本来ならば、マーガレットが失礼なことを言わないように釘を刺す私なのだが、何故かそういう気にならなかったのだ!





 そして一家全員で会うと、最初は会食をしている間は、ミシェル様は大人しく、また伯爵も伯爵夫人も変なことを言う人では無かったのだが、途中からお父様とお母様、伯爵と伯爵夫人の4人が家のことを話すために席を外し、私とミシェル様とマーガレットの3人が残った時に、ミシェル様はとんでもないことを言ったのであった!




「マーガレット嬢、本当は僕は君が良かったんだ、どうか僕と結婚して欲しいんだ!」



 なんて婚約者の私がいる前で堂々と言いだした……!





「……」



 マーガレットが黙っている……こういう時のマーガレットは絶対にブチ切れている時だ!


 普段は喋り倒して罵倒するのに、ごくたまに黙る時は、こいつだけは絶対に許さないって思っている時だと、長い付き合いで知っているのだ!



「聞いてくれよマーガレット嬢、君みたいな社交界の華と僕、実にお似合いだと思わないか?侯爵様に伝えてくれ、伯爵家との誠意のために、デキの悪い姉ではなく、自分と婚約すべきであると!」




 私はそれを聞いてブチ切れた!



 何て言うか、正直マーガレットが切れるのは分かり切っていたが、マーガレット頼りにするほど、姉として落ちぶれる気も無いからだ!




「……私は自分で言うのもなんですが、無欲なつまらない女だと思います、しかしそんな私でもあえて言います、アナタだけは絶対にお断りです!」




「なんだと!?いいぞいいぞ、つまらない女に僕の価値など分かるわけが無い、これで障害が無くなった、さぁマーガレット、僕と結婚しよう!」



 なんて飛び切り気色悪い笑顔で言うも、マーガレットの一言は無惨だった……!




「どんな馬鹿な相手でもきっと家のためとか、欲の無さから結婚するであろうあのお姉様ですら断る方の求婚とか、仮に相手が公爵家跡取り、いや天下の王太子様であっても、絶対にお断りですわ!」



「な……なんだって!?」



「さっきから聞いていればお姉様に無礼なことばかり、てめーなんかと結婚するくらいなら今すぐにでも出家するわ!」




 マーガレットって可愛いいかにも童顔な顔をしているのに、怒るとこうだから、男の人って無茶苦茶困惑するんですよね……!




「ふざけるな!僕にそんな態度を取っていいと思っているのか……!」




「はき違えるなよ三下貴族!お姉様行きますわよ!」



 こうして、ミシェル様……いえミシェルを置いて、お父様とお母様達がいる所に向かう!




 そしてマーガレットが言う前に私は自分の手で言う……!



「お父様、申し訳ないですが、私この結婚だけはどれほど家のためであっても、絶対にしません、どうかお断りして下さい!」



「い……一体何があったというのだ!」



 するとマーガレットが「私が言うわ!」と言ってもうボロクソミシェルのことを悪く言い、伯爵夫婦が困惑していてもお構いなし!


 しかしお父様は「伯爵殿!その話が本当ならば、私は娘をそんな家に送ることはできない!この話お断りさせて頂く!」



 伯爵夫婦にも思い当たるところがあるのか反論せずに代わりに、



「大変失礼しました!しかし両家の関係を破棄したくはありません!婚約破棄は応じますが、関係だけはなにとぞ!」


 と言うので、お父様もそこは大人なので「その件については、別件で話しましょう!」


 となり、婚約破棄だけ決まるのであった……



 ちなみにミシェルだが、マーガレットは復讐に燃えていて、社交界にいかにろくでもない男かの噂を流しまくったので、誰も相手がいなくなったそうな……!



 そして私はと言うと、幼馴染のピーターが、



「そんなことがあったなんて大変だったね……でこんな時に言うのはあれだけど、僕は君が婚約すると聞いて、初めて気持ちに気づいた情けない男なんだが、婚約破棄をしたというのならば、僕と結婚して欲しい!」



 なんてプロポーズをして来た。



 ピーターならば悪くないかなと私は思ったが、マーガレットは辛らつだった!



「お姉様が好きだというのなら、さっさと口説いとけよヘタレ野郎が!」



 まぁそう言わずになんて私が言うから、「やはりお姉様って無欲ですわね!」


 なんて言われたのであった……!



 でも何だかんだ、ピーターとなら上手くやっていけそうなので、私には十分なんですけどね!


 マーガレットは公爵家跡取りを狙って、今も婚活頑張ってますが(笑)