1
あたかも夏。そろそろ冬季の冷気も失せた4月上旬、1台のアルテオン、4ドアクーペが郡元に向かって疾駆していた。IQDRIVE、先進運転支援システムの支援を受けながら、高崎浩三は漫然とハンドルを握っていた。
助手席には、娘の満里奈が大学のテキストの詰まった鞄を抱えて、何故か沈鬱に座っていた。
高崎は鹿児島県知事に当選してから、はや1年、仕事も充実の中にあった。今日は、近頃の働き過ぎを少し是正しようと、珍しい休みを取っていた。服装は無論スーツだが普段よりは若干カジュアル気味の服だ。
満里奈は鹿児島大学に登校途中で、ベージュのニットに群青のカーゴパンツ姿。
「お父さん……」
「何だ」
「私、当惑しているの」
「何があった?」
満里奈は車窓を眺めた。
「私に言い難いことか」
「お父さんにも、出来ないことはあるんでしょう」
「当然だ、私も知事など遣っているが、万能ではない」
「警察に頼むしかないのかしら」
「警察、穏やかじゃないな」
「ええ、穏やかじゃないわ」
「何事かね」
「実は私、ストーカー被害に遭っているの」
「なる程、ストーカーか」
「ええ、それも一時に三人も」
「何だって、三人もか」
「ええ、伊藤洋治、山中勉、池田理の三人よ」
「同じ学部の同級生なのか」
「そう、法文学部も困った学生が多いわ」
「そうか、私が知事などしているから、金目当てなのだろう」
「そうね」
「警察は接触禁止の警告は出せる筈だがな」
「執拗なのよ、三人とも。簡単に引き下がりそうもない」
「それは困ったな」
「今夜にでも、県警に行こうかしら」
「それがいいだろう。既に何か被害は?」
「大丈夫、何もされていないわ」
「それは良かった」
「ええ、お父さん、私少し歩きます」
「大学に車を横付けされたくないか。私が目立つ職業だからか」
「そうね」
あたかも夏。そろそろ冬季の冷気も失せた4月上旬、1台のアルテオン、4ドアクーペが郡元に向かって疾駆していた。IQDRIVE、先進運転支援システムの支援を受けながら、高崎浩三は漫然とハンドルを握っていた。
助手席には、娘の満里奈が大学のテキストの詰まった鞄を抱えて、何故か沈鬱に座っていた。
高崎は鹿児島県知事に当選してから、はや1年、仕事も充実の中にあった。今日は、近頃の働き過ぎを少し是正しようと、珍しい休みを取っていた。服装は無論スーツだが普段よりは若干カジュアル気味の服だ。
満里奈は鹿児島大学に登校途中で、ベージュのニットに群青のカーゴパンツ姿。
「お父さん……」
「何だ」
「私、当惑しているの」
「何があった?」
満里奈は車窓を眺めた。
「私に言い難いことか」
「お父さんにも、出来ないことはあるんでしょう」
「当然だ、私も知事など遣っているが、万能ではない」
「警察に頼むしかないのかしら」
「警察、穏やかじゃないな」
「ええ、穏やかじゃないわ」
「何事かね」
「実は私、ストーカー被害に遭っているの」
「なる程、ストーカーか」
「ええ、それも一時に三人も」
「何だって、三人もか」
「ええ、伊藤洋治、山中勉、池田理の三人よ」
「同じ学部の同級生なのか」
「そう、法文学部も困った学生が多いわ」
「そうか、私が知事などしているから、金目当てなのだろう」
「そうね」
「警察は接触禁止の警告は出せる筈だがな」
「執拗なのよ、三人とも。簡単に引き下がりそうもない」
「それは困ったな」
「今夜にでも、県警に行こうかしら」
「それがいいだろう。既に何か被害は?」
「大丈夫、何もされていないわ」
「それは良かった」
「ええ、お父さん、私少し歩きます」
「大学に車を横付けされたくないか。私が目立つ職業だからか」
「そうね」

