無知な僕らと、正しすぎる彼女の命題。

廊下ですれ違っても、彼は私を見ようともしない。

 あの日、期待に満ちていた瞳はどこへやら、今の彼はまるで色を失った石像のようだ。
 
 ……それでいい。

 褒められたくて始めた更生など、一時の熱狂が冷めれば砂の城のように崩れるだけだ。
 
 けれど、放課後の昇降口。

 誰もいない下駄箱の隅で、彼は泥のついた誰かの靴を、無言で、ただ無言で磨いていた。
 
 その靴を磨いたところで、奪った時間は一秒も戻らない。

 ……不合理だ。

 そう切り捨てて通り過ぎる。