無自覚系お姫様は溺れるほどに愛され中

「サトやめろ。璃央がショックで生き返るだろうが」


「おっ、来たか碧葉柊佳。おせーじゃん。今日おばさんいないけど」  


「真知子さんに会いに来てるわけじゃないから。って紺野と尾崎まで……」


入口のドアに驚いた顔の碧葉君が立っていて、私たちの顔を交互に見た。


彼はもうみなさんとは仲良しみたい。
あとからじゅん君が教えてくれたんだけど、碧葉君は毎日ここに通って、璃央君のお母さんの話し相手になってくれていたらしい。


璃央の母ちゃんに惚れてんじゃね? 
そうみんなで心配するほど通いつめているみたい。
あいつは熟女好きに違いないと、3人は顔を寄せあって小声で私たちに教えてくれた。


そして今度は碧葉君に気づいた美姫さんと沙也可さんから悲鳴が上がった。 


「沙也可やばいよ、等身大の碧葉君いる! あの時のキラキラ王子だよ!」


「あっ、あのっ、一目見たあの日から次は猫に転生したいって思ってました。碧葉様のファンです、握手してください!」
 

美姫さんと沙也可さんは美術準備室でのことを言ってるんだと私にはわかるけど、碧葉君には自分がふたりを救ったなんて自覚はないだろう。


「あの日から? 猫ってボレロのことかな。俺の名前は紺野から聞いてたとしても、初対面だよね」


たぶん今碧葉君は、頭の中のファイルを開いている。すれ違った程度の人の顔でも覚えている記憶力の持ち主だから、会ったことのないふたりに認識されていることに戸惑っているんだと思う。


「なぁ柊佳、文化祭遊びにこいよ、うちの学校案内するし」


「いや、俺らが星菏宮のに行こうぜ」


「どっちもがいい、絶対いい!」


「行かないし来るな」



まるで、休み時間の教室みたい。
賑やかで、楽しそうなみんなの声で溢れてる。窓からは暖かい光が差し込んで、これが璃央君が生きてきた毎日なんだね。



みんなの気持ちが璃央君に届いてるといいなって、そんなまぶしすぎる景色を尾崎さんと見守っていた。