無自覚系お姫様は溺れるほどに愛され中

「実は私、碧葉君と婚約してるの。それは親同士が決めたことなんだけど、最近になってもうひとりの婚約者がいることがわかって……」



その人は幼い頃に引き離された碧葉君のお兄さんで、それが璃央君だったということ。


でも彼自身は自分に兄弟がいることも、家を継ぐ権利があるっていうことも何も知らされないままでベッドにいる。


だから双方の親に婚約制度の見直しをしてもらうために碧葉君と話し合っている最中だっていうことも、言えることは全部話した。


でも璃央君を抱きしめたあの日のことは、私だけの秘密。


これからだって誰にも言わないと思う。
たとえ夢や幻だとしても、あの時の璃央君の瞳の色も声も、手に収まりきれなかった背中も、あの時の瞬間ひとつひとつが宝物なの。
今この瞬間も、すべてをしっかり思い出せる。


むしろ日が経つごとにあの日の光景は色を濃くして、私を励まし続けてる。



「婚約の制度自体をなくすつもりだから、碧葉君からの告白に対しては一度丁重にお断りしたの。
これで璃央君を巻き込むことはなくなるから。今は一日も早く璃央君に元気になってほしいってことだけ考えてるよ。彼のお陰で友達がたくさんできて嬉しいって早く伝えたい。みんなと同じ気持ちだよ」


ふぅと息をついた。



『ちゃんと説明できてえらいじゃん。で、自分はすごいってこと、いつになったら気づく? あー、でも俺だけが知ってれば別にいいか。俺と羽奈だけが知ってれば』



ぬいぐるみのリオ君が言ってくれたいつかの言葉がよみがえって、泣きそうになった。


「話してくれてくれてありがとう。紺野さんとお友達になれて嬉しいのはこっちの方です」


「ほんとそれ。羽奈ちゃんの気持ちしっかり伝わったよ。璃央君のこと、みんなで全力で支えよ!」



尾崎さんと笑顔を交わした沙也可さんがぎゅっとスクールバッグを肩に食い込ませた。


「よし、あたしに任せて!」


美姫さんは誰かに電話をかけ出した。


「あー、もしもし。今から璃央んとこにみんな集合ね。はーい、うん、じゃ後でねー」


それから私に向かってにかっと笑ってみせると


「あたしたちはとっくにあいつにフラれてるんだから、変な気を使うのはなしだよ?」


そう言って頭を撫でて、駅まで手を繋いでいてくれた。


彼には、最初のお見舞いきり会っていない。
でもこれからまた会いに行くんだって思ったら、気持ちが急いて仕方なかった。