無自覚系お姫様は溺れるほどに愛され中




屋上での碧葉君のキスで、私はひとつの決心をした。
もうめそめそしない。  



碧葉君はやるべきことから逃げ出したりしないし、璃央君は私のせいで両家のいざこざに巻き込まれてしまったのかもしれないし。


そこから救い出せるのはやっぱりリオ君の持ち主の自分だけだと思う。


屋上を後にしたその日、生まれて初めて放課後の習い事をキャンセルして尾崎さんとミキさんとサヤカさんから、もう一度ちゃんと話を聞いた。


冷静になって、何が起こったのかちゃんと理解することが必要だって思ったし、赤の他人の私にあんなに優しく接してくれた村上璃央君という人のことを、もっとちゃんと知りたいって思ったから。


後日、ドキドキしながら尾崎さんたちと一緒に璃央君のお見舞いに行ってわかったことはたくさんあった。


まずは璃央君のお母さんとおばあちゃんが知り合いだったということ。
彼の魂が私のぬいぐるみに入り込んでしまったのにはやっぱり何かしらの縁があったからなんだろうか。


まさかとは思うけど、おばあちゃんが何か企んだのかな、なんてことまで少し考えちゃった。


それに、病室で眠る彼は確かにあの男の子だった。ほんとうに実在したんだ。


閉じたまぶた。長い睫毛。
その奥にある瞳の色だって、唇の温度だって知ってる。
それなのに意識がないだなんて信じられない。


怪我は頭部の深いところにあるらしく、外傷は何一つみあたらなかった。
綺麗な穏やかな表情で、ひたすらに深く眠っているようにも見えた。


魔法みたいに現れて「抱きしめてもいい?」なんてためらいなく言った彼のことを、ずっと忘れられない。


あの出会いが夢だったのか現実だったのか、ほんとうの答を彼の口から聞けたらいいのに。


だから今その体が不自由なら、またこっちにいつでも戻って来ていいよって、そんな気持ちでリオ君を置いて帰ったんだ。