無自覚系お姫様は溺れるほどに愛され中

昂った感情が落ち着いた頃、璃央と紺野が顔見知りだったことを知っていたか尋ねると、それはないと思うと言われた。
じゃあ璃央を可愛がってくれたといういづみさんのことはどうだろう。


いづみさんは紺野のおばあ様だ。
初等部で母親を失くした紺野の心の支えとなった温かくも気高い心の持ち主だったと聞いてはいた。


「いづみさんね、もちろん覚えてるわ。お願いだから碧葉家のぼっちゃまを可愛がってくださいって言っても懲りずに璃央に会いに来てくれたの。
柊佳さんは忙しすぎて年寄りの相手をする暇なんかないからって言ってらしたけど、あなたとその周りの大人たちに気を遣っていたんじゃないかしら」


「そうだったんですね、確かに自由時間は少なかったと思います」


そういえば当時から毎日のルーティーンは決まってた。語学やプログラミング……すでに経営学のさわりも少し。後は水泳なんかもやってたな。


「木の枝を振り回して遊んでるやんちゃな璃央を眺めて、できることはかなわなくてもあなたたちを一緒に遊ばせてやりたいって思っていたかもしれないわね」


それはつまり、俺たちの関係性を知っていたということなんだろうか。


「お孫さんを連れてらしたのは一度だけよ。女の子だから怪我をさせたくなくて璃央には近づけなかったはず」


いづみさんの笑顔を思い出しているのか、幼く無邪気な息子の面影を見たのか、柔らかな眼差しで病床の璃央をみつめて彼女は話を続けた。