無自覚系お姫様は溺れるほどに愛され中

紺野はこんな野蛮なやつのことが好きなのか?
放課後、一目散に帰るのはこいつに会うためだった、ってことだよな。


誰にも秘密でこいつと会っていたなんて信じたくないけど、もしそうだとしたら自分は少し不利な気がした。


というのは、紺野とは初等部の頃からの付き合いなのにいまだに怖がられているって自覚があったから。


どうしたら慣れてくれるんだろうって自分なりにいろいろと試したけれど、距離なんか簡単に縮まるもんじゃない。
だからこそライバルが現れて心穏やかでいられるわけがなかった。
 

「わざわざ挨拶に来てくれたのに申し訳ない、君のことはよく知らないままでいいかな。特にこの先不便はないと思うから」
 

「別に覚えなくてもいいよ。でもあんたは絶対に俺のことを無視できなくなる。その時存分に悔しがってね」


【俺の名前は村上璃央】


そう言われたあの日のことを、あいつの名前を、今になってしっかり思い出したんだ。