無自覚系お姫様は溺れるほどに愛され中

兄だなんてまだ気づいていなかったいつかの放課後、璃央はわざわざ俺を挑発しにクラスにやって来た。
紺野のお守りだというくまのぬいぐるみを片手に抱いて、だるそうに入口にもたれこっちを見ていた。  


「碧葉、顔貸せ」  

「君は? なんで紺野のぬいぐるみを」

「そりゃ特別な関係だからに決まってんでしょ」


うちの制服を着ていても、ここの生徒じゃないことは一目でわかる。
楽に着崩して、同じように楽な道を進むどこにでもいる半端な男。
それなのに、こいつの言葉には変な説得力があった。


「無理にキスしようとしたこと、根に持ってっから俺」


「そのロボットに聞いたのか? それとも覗き見? だとしたら悪趣味だな、俺たちは将来を約束している関係だって知らないのか?」


「ぜんぶ知っててあんたに喧嘩売ってんだよこっちは」


目の前までやって来て、同じくらいの背格好の俺たちは数センチの距離で睨みあった。