無自覚系お姫様は溺れるほどに愛され中




あいつが名乗った日のことを、適当に聞き流した自分を悔やむ。





自分に母親違いの兄がいることを聞かされたのはほんの1ヶ月くらい前のことだったと思う。
あの日俺と紺野と顔も知らない兄は、父を介して対面するはずだった。


でも遅れてホテルに着くと何か事故があったようでロビーは騒然としていて、先に来ていた紺野は気分が優れないと帰ってしまってたんだ。


姿を見せなかった兄のことはたいした男じゃないと思った。
俺たちに会うことすら(ひる)むやつなんだから、わざわざ時間を割く価値もない。


聞けば普通の私立高校に通う一般人らしいし、紺野と釣り合わないことは分かりきっている。
それなのに紺野の婚約者は俺一人だと認めてくれない父にも納得がいかなかった。


とにかく兄のことが気に入らないあまり、名前を知ろうとしなかった自分も悪かったと思う。
それを知っていれば、あのぬいぐるみを抱いて俺の前に現れた男子が兄だってことにすぐに気づけたんだから。


しかもあいつは紺野とすでに顔見知りみたいだった。誰も知らないところでふたりが会っていたなんて……。
もしかしたら将来を約束していたのかもしれない。