無自覚系お姫様は溺れるほどに愛され中

「そうですね、では行くべき場所へお帰りなさい。あなたの命はもう、あなただけのものです」


「何度も言わなくてもわかってるよ。もう腹は括ってる」  


そんな俺を不憫だと思ったんだろう。


「忘れないで。羽奈はたった今だって璃央と初めて過ごしたあの日の夢をみてるよ!」


ボレロが必死な声で教えてくれた。


「慰めてくれてサンキューな」


透明になった俺にもう羽奈の存在を感じとることはできなかったけど、ボレロは最後まで俺の世話を焼いてくれるんだな。


肉体に戻ったってわけわかんない装置に繋がれてて、ずっとそのままかもしれない。
 

目を覚ましたとしても何かの後遺症が残るかもしれないし、逆にすぐ終わるのかもしれない。


だけど今この瞬間、まだ心臓は踏ん張ってるはず。俺は生きてる。
 

「そうよ、あなたはまだ生きてるの」


ボレロの声が強く響く。


「そうだよな、碧葉にも派手にイキった手前、情けない姿を晒すだけで終わるのもムカつくしな」


そう割りきったら気持ちが軽くなった。


「羽奈、ばいばい。ぬいぐるみが動かなくなったくらいで泣くなよ」


俺は俺らしく軽やかに、重い自分を受け入れてみる。だからどうか羽奈も、自分の背中に羽根があるってことに早く気づけよ。