無自覚系お姫様は溺れるほどに愛され中

「この子、俺が今めっちゃ片思いしてる子なんだけど……」


「その前にこの子は──」


話によるとどうも彼女はこの猫の稀有な末裔で、この子に何かあれば一族は滅び世界から清廉は失われるとか。


で、彼女を守ってほしいんだと。
ちょっと意味がわかんないけど、どうにか理解しようとした。



「璃央さん、あなたは今までの自分がいいかげんだったことを認めましたね。日替わりで違う女の子と遊ぶなど不純だということにやっと気づいたのです。そんな自分に辟易して生まれ変わりたいと思っていたのなら、これはちょうどいいご褒美だと思いませんか?」


「反論しません。まさにその通りです」


猫はへこんだ俺をガン無視してコホンと咳払いをした。


「とにかく余命を有意義に使ってください。あなたの力でどうかこの子にたくさんの笑顔を」


「それって俺が幸せにしてもいいってこと?」


「もちろん」


とたんに希望が沸いてきた。
決めた。何に生まれ変わろうと俺は初恋をあきらめない。


「彼女はあの名家紺野家の愛娘。羽奈(はな)様といいます。歳はあなたと同じ17ですが」


「名前まで可愛すぎ。で、どんな字書くの?」


「ですがあなたが彼女の眷属(けんぞく)、つまりは私たちの使者であることは忘れないで」


「ケンゾク……?」


「とにかくあの子のためだけに新たなる業を燃やし、生まれ変わると誓ってください」


「……誓います」



更にまばゆい光を放ち饒舌に語りだすもんだから、彼女の可憐な名前をかみしめる時間も驚く猶予も質問タイムもなんもなかった。



「お付きの者を従えます。名はボレロ。神のご加護があらんことを」


いつの間にか隣には銀色の猫が寄り添っていて、俺を見上げてウィンクした。


「よろしくね、これでも普通の猫じゃないんだから心配しないで」


「じゃあ……よろしく」



挨拶をしたとたんに拘束具のワイヤーが突然重量感を増し、宙から地面に叩きつけられるような衝撃が走った。



何がなんだかわからないまま次に意識を取り戻したとき、俺は彼女の家のぬいぐるみに生まれ変わっていたのだった。