無自覚系お姫様は溺れるほどに愛され中




気づいたら鈍色(にびいろ)に光るワイヤーみたいなもので拘束され繋がれていた。


顔を上げると玉座みたいな場所に黄金色の光を放つ猫が足を揃えて座っていて、透明度の高い澄んだ目でこっちを見おろしていた。


「ここは……あんた誰?」


猫と普通に会話しようとしている自分も正気だとは思えないけどどう考えてもまともな世界ではなさそう。


「手荒なことをしてごめんなさい。こうでもしないとあなたの魂を繋ぎ止められなくて」


「助けてくれたってこと?」


猫は具体的な返事こそしてくれない代わりに太い尾をつりあげた。
そんなに打ち所が悪かったなんて。


強打のせいかよく回らない頭で思い出そうとすると、蛇口から水が吹き出すようにあの時の記憶が溢れだした。
沙也可と美姫はどうなった?
辺りを見渡してもあいつらはどこにもいない。


「俺と一緒だったふたりは?」


息を飲むと、猫の眉間に深いシワが寄った。


「あなたのおかげで彼女たちは無事です。ただこのままではあなたの御霊(みたま)はまもなく消えてしまいます」


冷静沈着な声で余命宣告をされ頭のなかが真っ白になった。


「嘘だろ……あの子に出会えないまま人生終わり? 名前すら知らないまま?」


絶望というものを噛みしめていたら、沈黙の後で猫はようやく口を開いた。


「奇しくも新しい魂の入れ物に心当たりがあるんです。璃央さんさえよければ新しい『リオ』に生まれ変わってみますか? 今のあなたのように美男子というわけにはいかないですけど」


「いいよ、なんでもいい!」


満足したように猫が目を細めると、そこから一直線に強い光がこぼれでて、長い黒髪の女の子を立体的に写し出した。


「ではあなたの人生はこの先、貴女(かのじょ)だけに捧げてください」


映像の子が着ている制服は高台にある名門校のもの。 


シンプルなブレザーなんだけどカラーの濃紺に白線が流れるだけで無駄なものがいっさいない代わりに、女子の憧れと男子の理想を詰め込んだような清楚な佇まいがあった。