無自覚系お姫様は溺れるほどに愛され中




「ずっとここにいたいけどもう行かないと。やらなきゃいけないことがあるから」


彼はすぐに凛々しい表情に戻って、まるで宣誓するように空を仰いだ。


「早退までしてどこへ行かれるんですか?」


何気なく問い返した言葉が、彼の顔を一層険しくさせてしまう。


「あいつのとこ。招待状は手渡しじゃなきゃ意味ないし、勝手に勝負から降りられても後味悪いしね」



「彼がどうして来賓なんですか? 事故に遭って意識不明なんですよね? それとも私に関わったせいで何かに巻き込まれてしまったんですか?」



「いや、来賓というよりは……とにかく紺野が心配するようなことは何もないから大丈夫だよ」



彼にそう言われると安心するのが不思議。
優しい笑顔を残して去っていく碧葉君の背中を見送る。
たぶん、私の分まで何かを抱えているはず。


いつだって広く周りに目を配り、遥か前を見ている彼と比べたら、私は自分のことしか考えられなかったただの子供だ。


それなのに、碧葉君はそんな私のどこを好きになってくれたの?