無自覚系お姫様は溺れるほどに愛され中

ため息をついたらドアが小さく軋む音がしてなぜかそこには碧葉君がいた。そうだった、生徒会長も鍵を持っているんだったと、慌ててリオ君と流れた涙を隠した。


「どうしてこんな所に……紺野、泣いてるの?」


こぼれた涙を見られてしまった。
隣に来てそっと涙を拭いてくれた彼の顔をゆっくり見上げると、その視線は不意に私のまつ毛の辺りに降りてきた。


「俺が紺野をいっぱい笑わせるから、あいつなんかのために泣かないで」


その時の微笑みは至極の焼き菓子みたいに甘くって、思わず目をそらさずにいられなかった。


「碧葉君は私に甘すぎます」


「だって紺野は特別だからね」


どうして璃央君のことを知ってるんだろう。どうして彼の事で泣いてるってわかるんだろう?
こんなに思ってくれる彼の事を私は何も知ろうとしなかったのに。


「紺野を変えたのはあいつなの? 毎日うちのクラスに喧嘩売りに来てたよ」


碧葉君の言葉はずっともやもやしているこの胸を締め付けた。


「それが、あのロボットは……」


ほんとうのことを伝えなきゃ誠実な碧葉君と対等にはなれない。
私は嘘つきで、臆病者で、いつまでもぬいぐるみに依存している子供なままだ。


……何から話そう。
言葉を探していると、先に碧葉君が呟いた。


「最新AI搭載のぬいぐるみ型ロボットなわけあるか。俺は柏木(かしわぎ)高校2-C、村上だってあいつそう言ってたよ」


「碧葉君の前でそう言ったんですか?」


名前も学校名もきっと事実だ。私の知らないところで、そんな大胆なことをしていたなんて。