無自覚系お姫様は溺れるほどに愛され中

お昼休みになると、ぐちゃぐちゃな気持ちを引きずったまま昼食も取らずに屋上へと向かった。


ここは立入禁止だけれど副会長の私は鍵を持たせてもらっている。
今までならこんなこと思い付きもしなかったのに、最近の私は悪い子だ。


ドアを開けると冷えた風に髪を煽られた。
初めての場所、初めての空、初めての景色。


刷毛で薄く掃いたようなすじ雲が空の高いところから世界に降り注ぐみたいだった。


(リオ君見て、秋の空ってきれいだね)


無意識にそう言葉にしてしまいそう。
びっくりしたりドキドキしたり心配したり、いろんな感情に振り回されたこれまでのことを嫌でも振り返ってしまう。


いつも前向きでまっすぐで正直で、考えるより先に体が動いて。自分に自信が持てない私のことを明るく元気づけてくれた。
大丈夫だよって、弱さも狡さも受け入れてくれた。


だけど擬人化だと思っていた人は私の大切なリオ君じゃなかった。それどころか赤の他人で恋人のいる人だった。


騙されて悔しいし、嘘ばかりで虚しい。
リオ君が汚されたみたいで許せない。


それなのにこの綺麗な空を彼と一緒に見たかったってどうして思ってしまうんだろう。


そんな小さな願いが、すべてのぐちゃぐちゃな感情を真っ白に上書きしていくなんておかしいのに。