無自覚系お姫様は溺れるほどに愛され中

「あの、おふたりの恋人のお名前……漢字を教えてください!」


紙とペンを取り出してふたりに預けた。


小さな体では大変な作業だとわかっていても、確認しないではいられない。
固唾を飲んで待って、ふたりが時間をかけて書いてくれたノートに現れた文字。
それは彼がこの手のひらに書いてくれたものと同じだった。


「紺野さん、大丈夫ですか?」


尾崎さんが心配してくれているのに、何も返事ができなかった。
あの時私が抱きしめたのは、リオ君じゃなくて赤の他人だったんだんだ。


「でも羽奈ちゃん聞いて? 一緒に過ごしててもし違和感を感じてなかったんなら、羽奈ちゃんのぬいぐるみになりきってくれてたのかもしれないよ」


そう言われると確かに辻褄の合うことがたくさんある。


頭の中身が綿だからと言われてこれまでの会話の記憶がないことに納得してしまったけれど、逆を言えばすべてが初めてのことばかりだったとも言える。


でもそうなると、私はずっと騙されていたってことになる。
見知らぬ他人が……しかもそんな浮わついた人がずっとそばにいたなんて。


「紺野さんがショックを受けてるってわかります。でも私、この子たちの心残りをなくして普通の高校生に戻してあげたいんです、だから一緒に病院に」


「ごめんなさい、そんなの無理ですっ!」


いたたまれずに、逃げ出してしまった。
だって、こんなの信じられない。
信じたくない。