「じゃあ紺野は苦手な猫から大事な作品を一人で取り戻そうとしてたってこと?」
「はい。でも結局何もできなくて碧葉君に助けていただきました」
何の役にも立っていないから苦笑いしかできないや。
「尾崎さんが悲しまずにすんだのは全部碧葉君のおかげです。ほんとにありがとうございました」
立ち上がって頭を下げたら碧葉君に腕を掴まれて、その手が少し震えていた。
「碧葉君……もしかしたらずっと具合が悪かったんですか?」
もしそうなら早く医務室へ行かなくちゃって、彼の手をそのままひっぱった。
「不調に気づけずごめんなさい」
「違うよ紺野……」
ボレロ様も心配そうに彼の足元に頬を寄せてきた。
「まだわかんない? 俺は紺野のことがずっと好きなんだよ」
真剣な眼差しのせいで、言葉を失ってしまった。
「好きなやつがいるって、他校に彼氏がいるって噂はほんと?」
「か……彼氏?」
そういえば、風のように下校する私を見て、碧葉君以外に特別な人がいるんじゃないかと学園の皆さんが噂している……なんてことを耳にしたことがあったけど、まさか碧葉君まで信じていたなんて。
「そいつじゃなくて俺だけを見てほしいって言ったらどうする?」
なんて切実な声なんだろう。
いつも冷静沈着な彼がこんな余裕のない顔をするなんて。
掴まれた手に少し力がこもり、そのまま彼の腕のなかに引き寄せられて、彼の吐息が頬に触れた。
「全部紺野が悪いんだからね」
「えっ、……碧葉君?」



