無自覚系お姫様は溺れるほどに愛され中




美術準備室前にまで来ると、彼はすぐに男子に声をかけられた。


「なぁ碧葉、搬入もうちょい待てん? どうにか最終下校までに終わらせるからさ」


絵画部門で作品を提出する人たちだ。
絵の具で汚れたジャージ姿の男子たちが、美術室の窓からこっちへ顔をのぞかせた。


と同時に私の存在にも気づく。
こんなとき、どんな顔をしたらいいのか未だに正解がわからないから、いつも通り軽い会釈をした。


そうすると、相手はいつもフリーズする。お互いの時間が一瞬止まる。


自分の会釈には毒物でも入ってるんだろうかと思うくらい、だいたいの人はそのまま固まってしまう。
普通に傷つくけれど、もうそれにもだいぶ慣れてしまった。


「おまえら、あんまりジロジロ見るな」


碧葉君が男子たちを(たしな)めてくれている。
やっぱり私がみんなから避けられていることに碧葉君も気づいていたんだ。


「おまえまじで紺野さんと……一回シメないと気が済まん」


「やば……至近距離の透明感まじやばい」


「時間がないんだからそっちに集中しろ」


「おまえ学園全男子の敵だって自覚してんの? その上で彼女のそばにいるんだろうな?」


みんなぼそぼそと話していて、よく聞こえない。碧葉君はついに男子たちに囲まれて揉みくちゃにされてしまった。


これはもしかして、訂正印をもらうより早くチャンスが来たってこと?
隙を見て、準備室に潜り込んだ。