無自覚系お姫様は溺れるほどに愛され中

「紺野さん大食堂(ホール)にいかれないんですか?」


「せ、生徒会の用事をすませたら向かうので、皆さん先に行かれてください」


笑顔を作りつつ、制服の下には変な汗が伝う。
ご飯なんかどうでもいい。
リオ君が一緒じゃなきゃなんの味もしない。


すぐにでも教室を飛び出したいのに、それができないのが腹立たしい。


いつも人の目ばかり気にしていて、これまでだって自分の気持ちを優先したことなんかない。
うなだれていると、知っている声に名前を呼ばれた。


「紺野、美術室に行こうか」


碧葉君が包みを掲げてこっちを見ていた。


「生徒会長、はるばる1組までお迎えにいらしたんですか?」


「そんな言い方大袈裟」


彼のそばにいた女の子たちがいっせいに彼に吸い寄せられていく。


「家のものが折を持たせてくれたから昼食はあっちでいい?」


なるべく隣に並びたくないとあれだけ避けてきたのに、彼の登場に泣きそうなくらい安心した。


「碧葉君、急いでもいいですか? 不本意なものが展示されそうでいてもたってもいられなくて」


捲し立てると碧葉君は表情の読めない真顔になった。


「紺野の慌てた顔なんて初めて見た気がする。なんか新鮮だね」


予想外の言葉が返ってきて無意識に顔が赤くなった。反して彼とおしゃべりしていた石野さんと政木さんの顔がいつものように曇り出す。


「大丈夫、なんの問題もないよ。仕事量が多いけどできるだけ俺が(さば)くから無理しないで」


「ありがとうございます」


後味の悪い視線を感じながらふたりで美術室へと向かうことになった。