無自覚系お姫様は溺れるほどに愛され中



「しないよ、そんなことするわけない」


璃央君はバッグから顔を覗かせているリオ君を取り出すと、人形劇をするみたいにコットン100%のキスをほっぺたにくれた。


「それって独占欲って言うんだよ」


自分の顔をリオ君で隠して、まるでぬいぐるみに言わせてるみたい。
でもそれってあの日と同じだ……璃央君は忘れてなんかいなかった。


「ね、続き、どーする?」


セリフだっていっしょ。
それがすごく嬉しくて、涙が込み上げてきた。


「思い出してくれたんだね、私たちが一緒に過ごしてたこと」


「いや、忘れてたけど」


「なにそれひどい、今すごく嬉しかったのに!」


ときめき、返してください!


「嘘、冗談だよ。だけど他の子とキスしないでなんて、そんなそそられること言われたらいろんなもんがバグって嫌でも思い出すって」


そしてやっぱり意地悪で甘いんだ。


「それ悪い子モードの璃央君の顔だよね、もうわかるんだから!」


咄嗟に自分の体を抱きしめた。
どこにいたずらされるかわからないから!


「もしかして、何かやらしーこと期待してない? 俺はいい子になったんでそういうことはしないけど?」


澄ました顔でそう言って、代わりにこれあげる、ってピンクの包み紙から何かを取り出した。


「他のクラス回ってて、好きそうって思ったから。はい」


「いいの? かわいい!」


くまのチャームがついたビーズのブレスレットをそっと手首にはめてくれた。


「リオ君に弟ができたみたい。また宝物が増えちゃった、ありがとう」


嬉しくて、しばらく月明かりの下で眺めていたら璃央君に名前を呼ばれた。


「ねぇ、羽奈」


「うん?」


柔らかい月の光が、璃央君の横顔を照らしてる。


「好きです。俺と付き合ってください」


どうしよう、璃央君の真剣な顔、かっこよすぎてまともに見られない。
息がうまくできなくて、声にならない。
どうにか言えたのは、たったの一言。
 

「……はい」


それだけ。


「っしゃ、やった!」


子供みたいに喜んではしゃいでるのはぬいぐるみの時と同じだった。

 
「じゃあ今度はお揃いの物買いに行こーな」


「お揃い? ほっ、欲しいです!」



思ったより大きな声が出てしまった。