無自覚系お姫様は溺れるほどに愛され中

今やっと、彼女にたどり着いた。
が。
感動のシーンをぶち壊し、俺たちを引き剥がしたのはもちろん天敵、柊佳だった。


「今すぐ紺野から離れろ」


「おまえのことも全部思い出したからな……」


サトもじゅんもシンタも自分で思い出せってこのことだったのかよ。ていうか普通に教えろよ。



今思えばこいつの声も知ってるような。いや、なかったことにしよ。



「喧嘩はやめてください。私はおふたりの婚約者なんかじゃないです。元、婚約者です。だから将来は好きな人とお付きあいしてその人と結婚します! リオ君は嫁ぎ先に絶対持っていくって決めてるんです!」


羽奈は鞄の中からぬいぐるみを取り出すと、ぎゅっと抱きしめて顔を真っ赤にした。


「紺野はそれくらいの宣言で俺たちが諦めるとでも思ってるんだ」


「おまえうるせーよ。邪魔なんだよ」


「どう考えたって彼女に釣り合う男は俺しかいないと思うけど?」


「片想いのくせにでしゃばんなって」


「こっちのセリフだよ」


柊佳との喧嘩がヒートアップしてなかなか収集がつかない。
鼻先でこいつを睨み付けたら、前にも同じことをしたなって思い出した。


また風が吹いて、汗が引いていく。
やっと切ないの正体がわかった。
鬱陶しいものなんか、もうなんもない。


三人で階段の端っこに座り込み、文化祭の喧騒を聞きながら空を見上げた。
誰かと誰かがはしゃぐ声。
少しだけ傾いた太陽。
もう汗はすっかり乾いてる。


「おまえ他に何思い出した?」


ちょっとクールダウンした、ため息混じりの低い声で柊佳が呟いた。


「そういえば羽奈に脱がされたな」  


柊佳に少しだけプレッシャーかけられたらそれでいいやと思ったんだけど、羽奈にバッグでどつかれた。


「嘘です、嘘言わないで、璃央君のバカ!」  


「痛った! 金具んとこ、ここにめりこんだし!」


「その程度かよ。ガキだな、俺たちはちょっとここでは……なぁ紺野?」


「それはあの、だって、なんていうか……」


「はいはい、負け惜しみね。信憑性ゼロだから」



みんなで笑ってると、中学生みたいだな。
俺の初恋は今やっと動き出した。
だから、羽奈はもう誰にもやらない。