無自覚系お姫様は溺れるほどに愛され中




演奏が終わっても興奮の波が鎮まりそうにない体育館は、俺たちには充分すぎるほど圧巻の景色だった。


調子に乗ってみんなでお客さんにファンサしながら舞台を去ろうとしたら、いちばん後方の隅にいた女子が視界に入ったきり、そこから目が離せなくなった。


出口に向かってこっちに背中を向けるのを見たら、なぜか舞台から飛び降りていた。


全員総立ちの客の間を縫って理由もわからないまま一直線に彼女を追う。


「ごめんみんなどいて! 通して!」


体育館をまっぷたつに割って行く。
だけどみんなが邪魔でうまく前に進めない。
なんでこんなことしてるのかわからない。
なんで心臓が跳ねてんのかわからない。
でもどうにかして追わなきゃって焦って足がもつれた。


ずっと探してて、みつからなくて、もういいやって投げ出して諦めたふりをして。


だけど諦められるわけがなくて、出てくるわけないとわかってても探し続けた宝物をやっとみつけたみたいな気持ちだった。


「みんな道を空けてくれ! 王子様がお姫様と出会わなきゃお話が始まんねー! 璃央死ぬ気で走れ!」


じゅんがマイクで叫んでる。
息が上がる。
人の波に邪魔されてあの子が見えなくなる。


頼む、行かないで。
溺れてるみたいに苦しい。
訳がわからない。
胸が張り裂けそうだ。