無自覚系お姫様は溺れるほどに愛され中

俺の担当時間前になると、女子がメイク道具とアイロンを持ってやって来た。


「村上君は学校の王子様って設定だからいつものまんまでいいよ。髪だけちょいアレンジして、ポイントメイクだけさせてね」


「あー、だったら自分でする」


白塗りを落とすシンタに睨まれたからそう言うと、じゅんが部屋に飛び込んできた。


「柊佳捕まえてきたから璃央とセットで売り出そうぜ。打ち上げが焼肉になるかも!」  


生徒会の仕事をすませてから来たという柊佳は制服姿だった。


うちの文化祭を見に行くなんて一言も聞いてなかったけど、サト辺りが呼んだんだろう。


確かにこいつの学校は有名校だし、見慣れない分コスプレ度もかなり高くて客は集まりそうだけど、顔が明らかに嫌がってる。


「こいつらとそんな仲良かったんだ?」

「なりゆきで」

「無理しなくていいのになんで来たんだよ」

「バンドだけ見て帰るつもりが時間を間違えた」

「帰れば? 悪目立ちすんぞ」

「もう遅い」


女子がわらわらと柊佳の後ろに連なっていた。


「鴨がネギしょってきたとはこれのことだぜ~」


他男子も柊佳を歓迎し、女子は一緒に写真を撮ってくださいとたかり始めた。


こいつが俺の弟だということがわかると、係のやつは校内で看板を持って呼び込みしてるチームに「双子のイケメン王子います」の文言を付けてそれを売りにするよう伝えた。
双子じゃないのに。


「今ならまだ間に合うから断れよ」

「おまえは全力でやる気だろ?」

「当たり前じゃん。焼肉食いたいし」

「だったら俺もやる。璃央には負けられない」

「あっそ、別になんでもいいけど」



焼肉につられたとは思えないけど、柊佳は意思を固めたみたいだ。


「クラス企画の運営責任者はどこにいるんだ? うちの生徒会に講師として来てくれたらいいのに。こういうのもたまにはいいな」


「キャラ強えーこと言うなよ。文化祭仕切ってんの誰よりも勉強できないサトだぞ」


呆れて見せたら柊佳は声を立てて笑った。
その顔を見たとき、ちょっと俺と似てるとこあるかも、って初めて思った。