無自覚系お姫様は溺れるほどに愛され中

「で、璃央のスマホさっきからうるせーんだけど、もしかして女子じゃないだろうな」


こんな流れだったから無視してたんだけど、今もまだ鳴りやまないもんだから見かねたじゅんがそれを覗き込んだ。


「遊びの誘いばっかじゃん!」


次々書き換えられていくメールのポップアップ通知は確かに仲のよかった女子から。いや、あんま知らない女子からも遊んだことのない子からのもあった。


「忘れてた。悪い、俺行かないとだわ」


思い出して立ち上がったら、すごい力でシンタに手首を掴まれた。


「璃央、おまえはそれでいいのか?」

「なにそれ、こわ」


苦笑して店を出ると、外はずっと寒くなっていた。文化祭でもカップルいっぱいできそうな、早くもそんな季節。
とりあえずメールをくれてた真由(まゆ)に電話した。


「悪い、いつメンで飯食ってた。ん? あー、別にいいよ、出てくればいいじゃん。 うち? 誰もいないから別にいいけど」


母親と、ぬいぐるみを抱いた女の子が横を通りすぎた。最近、そういう光景によく目が行ってしまう。


学校でも女子がバッグに付けてるキャラクターのマスコットなんかを、無意識に眺めてしまうことがあるし。


璃央って可愛いもの好き男子にキャラ変したんだ? って言われたりするくらいには。


「なんか買ってく?」


「へ? あーうん。適当に」


真由の話もほとんど耳に入っていなかった。
とりあえず、あのドラマの続き見ないとだから相手しないよって笑ったら、ドラマなんか見させないってさ。


で、部屋で女の子とふたりきりになるとやってくる自然な展開。
いつも脱がされ待ちなくせに今日は脱がしたいって俺のシャツに手を掛けた。


「キスとかすんなよ」

「ふふっ、たぶんそっちからしたくなるよ」


ホールをひとつ、ボタンがくぐる。
ふたつめに真由の指が伸びる。
と、頭のなかに意識が揺らぐような閃光が差して、反射的に真由を押し退けていた。


脱がされる、ってことにものすごい拒否反応を起こしたことがある。
そんな経験、ないはずだけど。


「もー、痛いんですけどぉ」

「ごめん……」


なんだろう、この違和感。


「やっぱ俺が脱がすわ」

「今日の璃央なんかかわいいね、それでもいいよ?」


甘えた真由に抱きつかれて思い出した。


なんか違う。
いや、何もかもが違う。
抱きあうって、こんなんじゃない。
言葉にできないくらい満たされる感覚を俺は知ってる。

でもなんで知ってるんだっけ。