無自覚系お姫様は溺れるほどに愛され中

だから帰り道の途中に寄った牛丼チェーン店でなんとなくその辺のことを聞いてみた。


「母親から聞いたんだけど、なんか俺、金持ちの息子だったらしいな」


カレーを掻き込んでいたじゅんが米を吹いた。
何も言わずいそいそと汚れたテーブルを拭く他ふたりを見て思った、絶対こいつらなんか隠してる。


「じゃあおまえもしかして転校すんの?」

「するかよ。そういうの全部放棄したって言ってたし」

「確かに星菏宮なんて璃央には合わないよな」


シンタの言葉にサトとじゅんはフリーズして、それに気づいたシンタは慌てて口を塞いでみせた。


「なんで転校先が星菏宮って知ってんだよ? みんな俺に黙ってることあるんじゃない?」


意識を取り戻して体調もだいぶ落ち着いてきた頃、あの時ホテルで会うはずだった顔も知らない父親と、存在すら知らなかった弟が見舞いにやって来た。


同い年のその弟、柊佳が星菏宮に通ってるってことは俺ら家族しか知らないはず。
今さら何を聞かされても驚かないのに、なんで隠し事なんかするんだろうと思ったら腹が立った。


「実は俺ら……璃央の弟の柊佳と仲良くなっちゃったんだよ」
と、サト。


「毎日見舞いに来てて絶対璃央の母ちゃん狙いだと思ってたのに違ったしなぁ」
とじゅん。


「ほんと普通にいいやつ。でもあいつは璃央の敵じゃん。しかもあんなハイスペックが相手だなんて……」
と、シンタ。


サトは観念して牛丼を食べるのをやめ、じゅんはスプーンを放り出し、シンタは気まずそうに水をぐびぐび飲んだ。


「柊佳が熟女好きってのは誤解だしハイスペックなのは本当だけど、何であいつが俺の敵なんだよ」


素朴な疑問を口にしたら、みんな口をぽかんと開けたまま動かなくなった。


「家督争いもないし、あいつと張り合う理由がないだろ。もし仮になんかあるんならそれ教えろよ。なんかすっきりしなくてすげー気持ち悪いんだ」


じゅんが最後に残しておいたトッピングの唐揚げを分かりやすく奪ったのに、誰も何もつっこんでくれない。


三人は悪い頭を寄せあって相談を始めて……でも意外とすぐに答えが出たらしく、俺の目をしっかりと見てこう言った。


「璃央は絶対真実にたどり着くってわかってるから俺からはなんも言わん!」


「そうだ、その方がメロい!」


「美味しいものは最後に取っておいたほうが断然うまいしな。って俺の唐揚げどこだよ!」
 

何を言っているのかいまいちわからないけど、みんながいつも通りだったから寂しさは紛れた。医者も時間が最良の薬って言ってたしな。


「そっか。じゃ、まぁいっか」


こいつらがそう言うんなら、くだぐだ悩むのはもうやめた。