林檎 -ringo- ①

翌朝。


美術部の私は、朝練はないので


ゆっくり支度をして家を出る準備をする。


朝目覚めてからも、

皓太のことばかり考えてしまう。




「昨日の皓太…、すごくかっこよかったな。」



心臓が、ふわふわ、

ドキドキする。







今日から毎日皓太に会えるのが


皓太と話すのが



すごくすごく楽しみだった。



少しでも皓太に

「可愛い」って思われたい。



私は、持っていたストレートアイロンを使って

丁寧に黒髪を整える。



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「あ、理華アイロンかけてるでしょ!すぐ分かる!可愛いね!」


朝私を見るなり、舞子はすぐ気づく



「え、そう? 
朝時間あったから、やってみた。ヘンじゃないかな…?」


と言いつつ、ちら、っと隣の席の様子を伺う。


皓太は後ろを向いて水嶋くんと話してて

全く気づいていないみたいだった。


…男子は、あんまりこういうのは気づかないというか、
興味がないのかな?


まあ、昨日初めて話したばっかりだし
無理もないか…。




チャイムが鳴り

数学の授業が始まると、


「このプリントの問題をまず15分で解いてみろ。
自分で解き終わったあとは、席の周りの人と話し合ってみてもいいぞ。」

数学の先生がそう言うので

まず自分で解いてみる。

うーん…、分かるのと、分からないのがあるな。
ちょっと難しいかも。



「マジで全然わかんねーんだけど。」


皓太がそう呟くので


「私も!よくわかんないよね…解けたのある?」


皓太にゆっくり近づき、彼のプリントを覗き込むと



白紙。まっさらだった。


「あれ?1つも解けてな…、」


と、私は思わず心の声が漏れる。



「そんな見んなよー!
俺めっちゃ勉強きらいだからさ、マジで分かんないの!てか、それ写させて!」


「ふふっ、そうなんだ。
写すのはまあ…別にいいよ?」


皓太に頼られて、ちょっと嬉しかった。



皓太は必死に私の答案を写している。




その焦った横顔が




ちょっと可愛い、と思った。


「天戸って頭いいんだね。」


皓太にそう褒められると、純粋に嬉しい。

にやけてしまいそうになるのを必死で我慢する。



なんか、皓太と話したり
一緒に授業が受けられるの、


幸せだな。



心がふわっと温かくなる。






しばらくして
答え合わせが始まると



……あれ、なんか、全然答えが違う…ような…。




「天戸さ……なんか、半分以上
答え違くない?」


と皓太につっこまれた。


そう。私も別に、勉強は得意じゃない。



「いやー…、合ってるつもりだったんだけどな…。」



「もしかしてさ…天戸も俺みたいにバカだったりする…?」


「は?!バ、バカじゃないし!!」


「えー、めっちゃ意外だな。なんか頭良さそうな雰囲気だしてたから!真面目そうだし。」



「もーっ!!皓太が私の勝手に写すからこうなったんでしょ!?」


「いやー、写したほうがラクだし…(笑)」


そうやって笑いながら言い合っていると



「コラ、そこうるさいぞ!」と先生に怒られた。



「もうっ、皓太のせいで怒られたじゃん!」


「いやいや、俺よりおまえのほうが騒いでたんじゃね?」




昨日テニスコートで見た皓太とは
また違った一面を知った。


てか、黙ってればかっこいいのに…。




「……あんたたち、仲良いねえ。」
と前の席の舞子が呆れていた。






今日はとても楽しかった。

皓太と喋っていると

すごく幸せな気持ちになる。

皓太とちょっとずつ仲良くなれて嬉しい。