女神イリオネスのバイオリン

「物理的に収穫を手伝ったわけでもないのに、どうして人の気持ちは、お天気ひとつでこんなに左右されるのかしら」

 楽器を背中に戻し、彼女は再び両手を広げると、天界を目指して羽ばたきます。

 彼女の指先から抜けた風が、力強く虹を描き残します。
 それを見た老父は、それを指差し、息子の嫁に話していました。

「ほら、空からのプレゼントだ。……まるで、誰かが俺たちを見ていて、ご褒美をくれたみたいじゃないか」

「もう、お父さんったら。そんな子供みたいなことを言って。でも……本当に、神様が見ていてくれたのかしらね」

 互いに笑い合い、再び土にまみれて働く背中。

(人間とは変わった生き物ですね)

 しかし、その心にはまだ、先ほど見た「家族の姿」が小さな棘のように残っていました。