女神イリオネスのバイオリン

 少女が背中の金色の羽を広げると、羽毛のようにふわうりと体が浮き上がります。
 きらきらと金の粉をこぼしながら、彼女は天高く飛び上がりました。

 空を泳ぐように広げた指先。その間を抜ける風は、虹の筋を描きます。
 彼女の名は、イリオネス。空の情景を司る女神です。

 彼女は天候をキャンバスに芸術を表現します。
 空で宙返りをするように、一回転すると、彼女が残した虹が、ハートマークを描きました。

 それを見たポセイデンは、親指をたて「グットシチュエーション」と声をかけました。

 少し遠回り。そんな気持ちも悪くないと感じたイリオネス。
 彼女は自由な金の翼で、大空を舞流れました。

 天界に帰る途中。ある村の丘では、作物を収穫している光景を目にしました。
 彼ら家族四人は、一仕事終え休憩しているようです。

 一人の男性が、布で汗を拭き立ち尽くすように畑を見ています。
 まだまだ、収穫するものも多く、少し気を落としているようでした。

「参ったな。明日から雨だと言うのに、この量は、夜には終わらないな」

 どんよりとした空気。その彼らの頭上は今にも雨が降りそうな曇り空。
 そんな声が聞こえると、その家族を見つめます。

(老人二人の、その息子夫婦ってところかしら、あの量は大変ね、せめて、作業がしやすいように雨雲だけでもどかしてあげましょう)