元トップアイドル、問題児のイケメン達の雑用係になりました

「はぁ!?財布も携帯も全部スリにスられた!?」

ついに泣きながら、説明されたその内容に私は叫ばずにいられなかった。
思わずため息が出る。

いやいや、そんな状態でどうするつもりなのよ。

「じゃあ無理ですね。諦めて警察に行ってください」

バッサリ言って、そのまま立ち去ろうとする。

だけど。

「どうしても……行がないと……っ」

震える声。

その必死さに、ほんの一瞬だけ、足が止まった。

……めんどくさい。すごく、めんどくさい。

なのに。

私はついさっきの自分の姿を思い出す。

『引き止めてほしかった。なんでもいいから言葉をかけてほしかった…』

「……っ」

私は小さく舌打ちして、

「……あーもう、わかったわよ」

と、振り返っていた。

「…そういえば、私もそっち方面に用事あったんでした。なので途中までなら送っていけますけど」

嘘だ。完全に嘘。

でも――

「ほ、本当ですか……!?」

ぱあっと顔を明るくするその様子に、

……なんか、断れなかった。

「……タクシー乗るわよ」

私はそう言って、歩き出した。

――この時の私はまだ知らなかった。

こいつが、これから私の人生をめちゃくちゃに振り回す存在になるなんて。