元トップアイドル、問題児のイケメン達の雑用係になりました

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社長室を出て、どれくらい歩いたのか分からない。
気づけば私は、見慣れたはずの街の中を、あてもなく歩いていた。人の声も、車の音も、全部が遠く感じる。

――活動休止。

その言葉だけが、頭の中で何度も繰り返される。

「……はぁ」

思わず、深いため息がこぼれた。納得なんて、できるわけがない。理由も教えてもらえないまま、全部奪われるなんて。

「……意味わかんない」

小さく吐き捨てた、その時だった。

「あ、あの゛……っ」

……なんか、変な声が聞こえた。視線を向けると、そこには、サングラスに黒マスク、さらにフードを目深に被った、不審者としか言いようがない男が立っていた。
その周りだけ、人が避けるようにいなくなっている。

……なにあれ、怖。

「す、すみませ゛ん……っ」

通りすがりの人に掠れた声で、声をかけているが、

「ひ、ひぃっ……すみません!」

と、みんな逃げていく。

……まあ、そうなるよね。

関わりたくない。

私はそう思って、さっと視線を逸らし、その場を通り過ぎようとした――

「ず、ずみません゛……っ!」

「っ!?」

運悪く、捕まった。

袖を掴まれ、思わず顔をしかめる。

「……なんですか」

なるべく関わりたくないという気持ちを全開にしながら、低い声で返す。すると男は、必死な様子で言った。

「スターライトドームまでって……どうやって行げばいいんですか゛……っ」

……は?

思わず固まる。

「……ここからだと、電車何本も乗り継がないと無理ですよ」

正直に答えると、

「お、おがねも……スマホも……全部……っ」

男は今にも泣きそうな声で言った。

「……はぁ?なんて?」

何を言っているのか全然わからない。
ここまで来るともう投げやりだ。
周りから視線が集まっているのはわかるけれど、今の私はあんなことがあったせいでとても傷心状態だ。正直、人からの視線なんて全然気にならない。
変装もしてるし、私が『ひめ』ってこともバレないだろうしね。

「はっきり言ってくれないとわからないんですけど」

私は鋭い声でそう言う。

「ひっ、ひい」

男は情けない声を出す。

「じ、じづは…」