教室には、えんぴつの音が広がっていた。
カリカリ、カリカリ。
飛羽も、ノートを見つめる。
さっき、先生が説明していたはずなのに。
うまく頭の中で、つながらなかった。
問題を読んで、少しだけ考える。
けれど――
途中で、止まった。
どこから考えればいいのか、分からない。
えんぴつを持ったまま、手が止まる。
周りを見ると、みんなはもう書いていた。
ちゃんと、進んでいる。
飛羽だけが、取り残されたみたいだった。
「……」
先生に声をかければ、教えてくれる。
分かっている。
でも――
言えない。
胸の奥が、少しだけぎゅっとする。
説明のときに、聞けなかった。
分からないまま、うなずいてしまった。
このまま、時間が過ぎていく。
やっぱり、何も書けないまま――
キーンコーンカーンコーン
チャイムが、鳴った。
「あ、鳴ったね」
先生の声が、教室に広がる。
「続きはまた今度ね」
一気に、教室の空気が変わる。
立ち上がる音。
話し声。
「外行こ!」
「ねえねえ、これさ!」
みんなが、動き出す。
飛羽は、そのまま座っていた。
ノートを見つめたまま。
分からないまま、終わった。
「……どうしよ」
小さく、つぶやく。
そのとき――
「飛羽」
顔を上げると、蓮がいた。
その隣に、由奈もいる。
「さっきのやつ、分かった?」
飛羽は、少しだけ迷ってから、うなずいた。
「……分かんない」
由奈が、少しだけ首をかしげる。
「先生に聞きに行く?」
でも――
さっき、できなかった。
説明のときも、言えなかった。
「……」
ノートを見る。
また、分からないままになる。
それが、少しだけこわかった。
飛羽は、少しだけ息を吸った。
そして――
「……行く」
小さく、言った。
蓮が「おっけ」と笑って、
由奈も「いこ」とうなずく。
三人で、先生の方へ向かう。
足は、少しだけ重い。
それでも、止まらなかった。
先生は、教卓のところにいた。
近づいていく。
ドキドキする。
逃げたくなる気持ちが、少しだけよぎる。
それでも――
飛羽は、止まらなかった。
先生の前で、立ち止まる。
一瞬、言葉が出てこない。
蓮も由奈も、何も言わない。
ただ、隣にいる。
飛羽は、ノートをぎゅっと持った。
そして――
「……先生」
声を出す。
先生が、やさしく目を向ける。
「どうしたの?」
飛羽は、ノートを開いた。
「ここ……わかんない」
少しだけ、声が震えた。
でも、ちゃんと伝わった。
先生は、すぐに近くに来る。
「どれどれ」
ノートをのぞきこんで、
やわらかく笑った。
「ここまでは合ってるよ」
その言葉で、少しだけ安心する。
「この次、どうすると思う?」
飛羽は、考える。
さっきより、少しだけ落ち着いている。
「……こう?」
「うん、それでいいよ」
先生が、うなずいた。
そのとき――
蓮が、小さく声をもらした。
「……あー、そういうこと?」
由奈が、くすっと笑う。
「蓮も分かってなかったん?」
その空気に、少しだけ力が抜ける。
そのまま、続きを聞く。
さっき分からなかったところが、
少しずつつながっていく。
「あ、そっか……」
小さく、声がもれる。
分かった。
ちゃんと、分かった。
飛羽は、ノートを見つめた。
さっきまで止まっていたところが、
ちゃんと進んでいる。
胸の奥が、じんわりあたたかくなる。
「ありがとう」
そう言うと、先生は軽くうなずいた。
「いいよ。また分からなかったら、聞いてね」
飛羽は、小さくうなずく。
さっきの続き。
少しだけ考えて――
書いた。
飛羽は、ほんの少しだけ笑った。
カリカリ、カリカリ。
飛羽も、ノートを見つめる。
さっき、先生が説明していたはずなのに。
うまく頭の中で、つながらなかった。
問題を読んで、少しだけ考える。
けれど――
途中で、止まった。
どこから考えればいいのか、分からない。
えんぴつを持ったまま、手が止まる。
周りを見ると、みんなはもう書いていた。
ちゃんと、進んでいる。
飛羽だけが、取り残されたみたいだった。
「……」
先生に声をかければ、教えてくれる。
分かっている。
でも――
言えない。
胸の奥が、少しだけぎゅっとする。
説明のときに、聞けなかった。
分からないまま、うなずいてしまった。
このまま、時間が過ぎていく。
やっぱり、何も書けないまま――
キーンコーンカーンコーン
チャイムが、鳴った。
「あ、鳴ったね」
先生の声が、教室に広がる。
「続きはまた今度ね」
一気に、教室の空気が変わる。
立ち上がる音。
話し声。
「外行こ!」
「ねえねえ、これさ!」
みんなが、動き出す。
飛羽は、そのまま座っていた。
ノートを見つめたまま。
分からないまま、終わった。
「……どうしよ」
小さく、つぶやく。
そのとき――
「飛羽」
顔を上げると、蓮がいた。
その隣に、由奈もいる。
「さっきのやつ、分かった?」
飛羽は、少しだけ迷ってから、うなずいた。
「……分かんない」
由奈が、少しだけ首をかしげる。
「先生に聞きに行く?」
でも――
さっき、できなかった。
説明のときも、言えなかった。
「……」
ノートを見る。
また、分からないままになる。
それが、少しだけこわかった。
飛羽は、少しだけ息を吸った。
そして――
「……行く」
小さく、言った。
蓮が「おっけ」と笑って、
由奈も「いこ」とうなずく。
三人で、先生の方へ向かう。
足は、少しだけ重い。
それでも、止まらなかった。
先生は、教卓のところにいた。
近づいていく。
ドキドキする。
逃げたくなる気持ちが、少しだけよぎる。
それでも――
飛羽は、止まらなかった。
先生の前で、立ち止まる。
一瞬、言葉が出てこない。
蓮も由奈も、何も言わない。
ただ、隣にいる。
飛羽は、ノートをぎゅっと持った。
そして――
「……先生」
声を出す。
先生が、やさしく目を向ける。
「どうしたの?」
飛羽は、ノートを開いた。
「ここ……わかんない」
少しだけ、声が震えた。
でも、ちゃんと伝わった。
先生は、すぐに近くに来る。
「どれどれ」
ノートをのぞきこんで、
やわらかく笑った。
「ここまでは合ってるよ」
その言葉で、少しだけ安心する。
「この次、どうすると思う?」
飛羽は、考える。
さっきより、少しだけ落ち着いている。
「……こう?」
「うん、それでいいよ」
先生が、うなずいた。
そのとき――
蓮が、小さく声をもらした。
「……あー、そういうこと?」
由奈が、くすっと笑う。
「蓮も分かってなかったん?」
その空気に、少しだけ力が抜ける。
そのまま、続きを聞く。
さっき分からなかったところが、
少しずつつながっていく。
「あ、そっか……」
小さく、声がもれる。
分かった。
ちゃんと、分かった。
飛羽は、ノートを見つめた。
さっきまで止まっていたところが、
ちゃんと進んでいる。
胸の奥が、じんわりあたたかくなる。
「ありがとう」
そう言うと、先生は軽くうなずいた。
「いいよ。また分からなかったら、聞いてね」
飛羽は、小さくうなずく。
さっきの続き。
少しだけ考えて――
書いた。
飛羽は、ほんの少しだけ笑った。

