「本音を隠していた子 — だいじょうぶと、言えるように —」

休み時間になって、教室の中が一気ににぎやかになる。

「さっきのさー」

由奈が、飛羽の机の方に来る。

「なに?」

「算数の問題!むずかしくなかった?」

「あー、あれ!むずかったよな」

蓮がすぐに反応する。
三人で話していると、

「なんのはなし?」

別の子が、近くに来た。

「さっきの算数の話!」

「えー、なになに?」

「むずかしかったよなー」

気づけば、少し人数が増えていた。

「それでさ――」

蓮が話しながら笑う。
周りも、つられて笑っている。
飛羽も、少しだけ笑った。

でも――

気づけば、少しだけ後ろに下がっていた。
誰かが話すのを、聞いている。
それでも、楽しくて。
無理に話そうとしなくてもいい。

ちゃんと、そこにいた。

「飛羽は?」

急に名前を呼ばれて、顔を上げた。

「……え?」

「どうだった?」

少しだけ、みんなの視線が集まる。
一瞬だけ、迷う。

でも――

「……ちょっとむずかしかった」

小さな声だったけど、
ちゃんと、言えた。

「だよねー!」

誰かが笑う。

「やっぱりむずかしいよな」

その空気に、少しだけ安心する。
飛羽も、ほんの少しだけ笑った。