棘ある花も愛されたい


それからわたしは、炊飯器を開け、予め炊いてあった白米を茶碗に盛った。
それをテーブルに運び、今さっき買って来た納豆と胡瓜の浅漬けをレジ袋から取り出す。

「あ、飲み物···、ビールと水しかないんですけど、どうしますか?」

苦笑いを浮かべながら、わたしがそう言うと、禅さんは「じゃあ···、出逢いに乾杯する?」と言って笑った。
わたしは「じゃあ、乾杯しましょうか。」と笑い返し、冷蔵庫から缶ビールを2缶取り出した。

「こんな質素なご飯で申し訳ないですけど······」
「とんでもない!これだけあればご馳走だよ!それじゃあ、乾杯しよ!」

禅さんはそう言って、缶ビールを手に取り、プルタブを引く。
わたしはそんな禅さんの隣に腰を下ろし、同じく缶ビールを手に取った。

「じゃあ、乾杯!」
「乾杯。」

そう言って、わたしたちは缶ビールを軽くぶつけ合い乾杯をした。

隣で缶ビールをグビッと喉に流し込んでいく禅さんは、とても美味しそうにビールを飲んでいく。
そして「ぷはぁ〜!」と言いながら、宙を仰いでいた。

「美味しそうに飲みますね。」
「だって、美味しいからね!じゃあ、早速ご飯も戴きます。」

禅さんはそう言うと、手を合わせて、わたしが用意した割り箸を割った。
それからまず茶碗を手に持ち、白米を箸で掬い上げ、口へと運んでいく。

わたしは缶ビールを飲みながら、その様子を横目で見ていた。

すると禅さんは、「ん!」と言いながら目を大きく見開いた。

「丁度いい固さ!俺、このくらいの固さが好きなんだよね!」
「本当ですか?良かった。」

そこから、禅さんは胡瓜の浅漬けも口へと運び、白米と一緒に頬張る。
その姿は、まるでご馳走でも食べているかのように幸せそうで、禅さんはご飯を噛み締めながら笑みを浮かべていた。

「浅漬けとも合う〜、最高!」
「ここに味噌汁があったら良かったんですけどね。今、味噌切らしてて。」

わたしはそう言いながら、胡瓜の浅漬けを箸で摘み、口へと運んだ。

「味噌汁かぁ、しばらく飲んでないなぁ。」
「味噌汁好きですか?」
「好きだよ!玉子と玉ねぎの味噌汁とか、わかめとか、豚汁も好き!」
「じゃあ、次は味噌汁作りましょうか?」

茶碗を手に持ちながらわたしがそう言うと、禅さんはハッと驚いたように「えっ!作ってくれるの?!」と言った。

「話し聞く感じだと、仕事ばっかりしてご飯食べてなさそうなので。わたしが作るご飯で良ければ、ですけど。」
「紗和ちゃんが作ってくれるなんて最高だよ!あぁ〜、味噌汁楽しみだなぁ!」

そう言って禅さんは、ウキウキした様子で納豆を手に取り、タレを入れてかき混ぜ始めた。

禅さんはいちいち良い反応を見せ、些細な事で喜び、そんな姿にわたしは可愛らしさを感じてしまった。

(諒祐は···、こんな質素なご飯で喜んだ事はない。わたしが作る味噌汁も、楽しみにしてくれた事はなかったなぁ。)

そんな事を思い出しながら、わたしは自分の女々しさに呆れ果てるのだった。