「もう、2週間になります。」
「2週間かぁ···、連絡は?」
「いえ、全く······」
わたしが俯きながらそう言うと、男性は溜息混じりに「そっかぁ···」と呟き、空を見上げた。
「君は、愛してたんだね。その、彼のこと。」
静まり返る公園内に柔らかい響く男性の声。
わたしはその言葉に胸がズキッと痛んだ。
愛していた···―――わたしは、ちゃんと諒祐を愛せていたのだろうか。
諒祐は、わたしを愛してくれていたのだろうか。
わたしたちが抱いていたのは、愛だったのか、恋だったのか―――···
もし、愛だったら、諒祐が居なくなる事はなかったのかな。
「わたしは、きちんと彼を愛せていたのか···自信がありません。」
「でも、好きだったんでしょう?」
「···愛と恋の違いって、何だと思いますか?」
男性からの質問にも答えず、わたしが質問返しをすると、男性はわたしの質問に「んー、難しい質問だね。」と唸った。
それから腕を組んで夜空を仰ぐ男性は、「そうだなぁ、」と言った後でこう続けた。
「恋は、一人でも出来るもの。でも、愛は一人では出来ない。相手がいて、想い合っていないと"愛"にはならない···とか?」
「愛は、一人では出来ない···、想い合っていないと、"愛"にはならない···かぁ。」
わたしが男性の言葉を復唱すると、男性は「まぁ、言葉にして表すのは難しいよね。愛は、複雑なものだよ。」と言い、片手を空へ向けて伸ばした。
「愛を掴むって、月を掴むくらい、難しい事だよなぁ。」
そう言いながら、男性は月を掴む素振りをして見せた。
そして、「掴みたい時に掴めたらいいのにね。」と呟き、握り拳を空に向けて掲げていた。
その時、男性のお腹からギュルギュルという音が鳴るのが聞こえた。
一瞬、時が止まったかのように感じたが、すぐに男性は「ははっ!」と照れ笑いを浮かべ、腹部を押さえて「腹減ったぁ〜。」とベンチの背に身を委ねた。
「今日、何も食ってなかった。」
「えっ、朝からですか?」
「うん。ずっと、引き篭もって仕事してたから。」
「引き篭もって?リモートワークなんですか?」
わたしがそう訊くと、男性は少し考えた後で「リモートワーク、みたいなかっこいいもんでもないかな?」と言い、眉を下げて微笑んだ。
「···もし良かったら、一緒にご飯食べますか?って言っても、白飯に納豆と胡瓜の浅漬け、ですけど。」
そう言いながら、わたしは苦笑いを浮かべ、手に持っていたレジ袋を持ち上げて見せる。
すると、男性は「え、マジ?!納豆と胡瓜の浅漬けって最強じゃん!」と言い、花を咲かせたような笑顔を見せた。
「あ、申し遅れたけど、俺、日置禅(ひおき ぜん)。」
そう言って、"日置禅"と名乗る男性は、わたしに手を差し出し握手を求める。
そしてわたしは、「土倉紗和(つちくら さわ)です。」と名乗ると、恐る恐る男性の手を取り、ギュッと握り締めた。



