禅さんの自宅に着くと、既に玄関からスパイシーな香りが漂っており、わたしは禅さんが作ってくれた料理が何なのか気付いた。
しかし、それが何なのかは敢えて言わず、リビングへ進んで行く。
そしてわたしがダウンジャケットを脱いでいる時、禅さんはコートを脱ぎながら「紗和ちゃんは座って待ってて!」と言う。
わたしは「はい、ありがとうございます。」と言って、禅さんに言われた通り、脱いだダウンジャケットをソファーの上に置いてから、食卓テーブルについて待っていた。
すると、禅さんは温め直した料理を白い皿に盛り付けて、わたしの目の前まで運んで来てくれる。
禅さんが作ってくれた料理は、予想していた通りのカレーライスだった。
「わぁ、美味しそう。」
「見た目は良い感じでしょ?」
禅さんはそう言って、照れ隠しに笑う。
それから禅さんが席につき、わたしたちは向かい合わせになり、手を合わせて「戴きます。」と声を揃えた。
わたしは大きめにカットされた野菜が入るカレーライスをスプーンで掬い、そっと口へ運んでいく。
その姿を禅さんは不安気に見届けており、わたしはパクッと口へ入れたところで禅さんと目を合わせた。
「どう?」
そう言って、わたしの反応を待つ禅さんに、わたしはカレーライスを噛み締め、味わいながら目を閉じた。
禅さんが作ってくれたカレーライスは、中辛のルーが少しサラサラしたもので大きめの野菜の火の通り具合は甘めだった。
しかし、何よりもわたしは禅さんの愛情が込められている事に胸がいっぱいになり、自然と頬が緩んでいった。
「美味しい。」
わたしがそう呟くと、禅さんは安堵したように微笑み、「本当?」と言って自分でもカレーライスを口へ運んでいく。
すると禅さんはカレーライスを噛み締めながら微妙な表情を浮かべ、「ちょっと野菜が固かったね。」と苦笑いを浮かべた。
「このくらいなら、全然大丈夫ですよ。それに、わたしは禅さんが作ってくれた事が何より嬉しいです。人にご飯を作ってもらえるって、こんなに嬉しいものなんですね。」
わたしがしみじみとそう言うと、禅さんは「これからもっと、料理の勉強して、紗和ちゃんに美味しいもの食べてもらえるように頑張るよ。」と言って、穏やかに微笑む。
―――これからもっと···
(それは、これからも一緒に居てくれるって事?)
そんな期待をしながらも、わたしは一瞬マイナスに捉えようとしてしまう。
それは、期待をして傷付く事を恐れたからだ。
しかし以前に禅さんが言っていた言葉をふと思い出す。
―――人を期待させて傷付けるような嘘は、言わないから
それを思い出し、今まではすぐに諦めようしてきたわたしが、禅さんの言葉を信じてみようと思い、気持ちを前向きにした。
「ありがとうございます。楽しみにしてますね。」
わたしはそう言うと、禅さんが作ってくれたカレーライスを食べ進めていく。
禅さんはわたしの言葉を聞き微笑むと、「次は何作ろうかなぁ〜!」と言いながら、宙を仰いでいた。



