エイプリルフールの死んだふり

「バアン」



 北見は福島を打つ振りをした。

 銃で撃つ振りだ。



 いつもしていた。銃で撃つ振りをしていた。

 いつもの習慣だった。



 だけど、その日は違った。





 ★



「え、なんで」



 福島恵果の体から血が止まらない。僕は玩具で彼女を撃ったはずだ。なのになぜ、彼女は口から、お腹から血を流して倒れているんだ。



 意味が、意味が本当に分からない。

 どうしてどうして、本当に意味が分からない。



 僕は撃ったマネを舌だけなのに。



 僕はその場から逃げ出した。訳が分からなかったから。



 ★



「えへへ、上手く行った」



 上手に彼をだますことが出来た。

 作戦が上手く行った。



 今日はエイプリルフール。

 一年で唯一嘘をついていい日だ。

 その日にわたしは屈指の死んだふりをした。

 彼を、北見悟をだますために。



 上手く行って良かったと思う。

 これも私の演技力が高いからかな。



 まあでも、エイプリルフールだとは気づいているだろうけど、でも、種明かしだけはしないとね。



 私は立ち上がって、そして彼の後を追う。

 種明かしをするために。







「――え?」



 瞬間、私を襲ったのは凄まじい痛みだった。

 何が起きたのかすら分からない。だけおd、唯一わかるのは、まずいという事。



 私はそのまま意識を暗闇に持っていかれた。





 ★





 僕は家に帰った。

 訳が分からないままだ。

 僕はベッドに沈む。

 僕は警察に逮捕されるのかな。そもそもなんであんなことになったの?

 意味が分からない。



 僕のせい、だよね。



 っどう考えても今のままじゃだめだ。



 このままじゃ。



 僕は家を出た。



 彼女のために救急車を呼ばなくてはならなかったのだ。





 僕は家を出た。その瞬間だった。



「悟、大変」母さんだ。「それどころじゃない」僕は叫んだ。



 しかし、つぎの瞬間、信じられない言葉を聞いた。


「実は――――」


 その言葉を聞いて、僕は居ても立っても居られなくなった。

 いったい、どうして。……



 なんで


 なんで



 なぜ、





 そして僕が病室に行くと、恵果は目をつぶり、ぐっすりと眠っていた。信じられない信じられない。

 どうして、一体どうして!!





 僕は時計を見た。

 13時半



 事故にあったのが、11時50分という事らしい。



 痛々しい姿。全身傷だらけの彼女を見て、僕の心は、深く傷ついた。



 今気づいたことだが、今日はエイプリルフールだったらしい。

 つまり、今日彼女は死んだふりをしていたのかもしれない。僕の撃つ振りを受けて。



 っだとしたら、まさに僕のせいじゃないか。



 僕があの場から逃げた。エイプリルフールだという事を知らずに、彼女の死んだ振りが本当だと信じ切って。



 ああ、僕はなんてことをしたんだ。全て、僕のせいじゃないか。

 きっと僕を追う最中に、事故にあったのだ。

 種明かしをするために、


 僕を追っている時に。




 ……犯人はすぐに捕まった、否自首したらしい。



 だけど、そんな事は今となってはどうでもいい。今僕が気になる事は、恵果の生死だけなのだから。















 ――





 ――



 ――





 それから、三ヶ月が経った。恵果はまだ目を覚ましていない。





 僕は毎日彼女を看病してきた。まだ目覚めると信じたい所だけど、



 でも、一向に目を覚ます気配がない彼女を見ると、正直辛いところがある。目を背けたいところだ。



 いつまでも待ってはくれないだろう。

 もし容体が悪くなれば、きっと彼女は……

 恵果の治療が打ち切られる可能性もある。



 僕はまたため息をついた。





 僕は学校終わりにまた病院に向かった。きっといつもと同じことだろう。また眠っている恵果を見るだけになるだろう。





 ――そう思っていた。





「あれ、悟君?」



 病室にいくと、恵果がそうかすれた声で言う。

 掠れているのは当たり前だ。っだってずっと眠り続けていたのだから。

 いや、そんな事よりも、



「恵果大丈夫なのか?」

「うん、大丈夫だよ?」

 不思議そうに彼女が言った。何を言ってるの?なんていう枕詞がついてもおかしくないだろう。



「本当に大丈夫なのか?」

「大丈夫だって。……一体どうしたの?」

「いや、でも、車にひかれて」

「あー、あれならエイプリルフール」

「え?」

「エイプリルフールだよ。中々しゃれてるでしょ」

「何がだよ」

「死んだふり。車にひかれて死んだふりすることで、二重の仕掛けをこうじていたんだよ」



 確かに恵果は死んだふりをしていた。今回の事故もそれの延長戦という事かよ。



「エイプリルフールはもう過ぎているんだよ」

「あはは、そうだっけ。でも」



 にっこりと笑って。



「エイプリルフールドッキリ、成功!!」



 そう元気よく言ったのだった。

 それに対し、僕はもう一度、「種明かし遅いんだよ、三ヶ月過ぎてんだよ」と言った。すると、恵果はまた笑った。


 ただ、そこには楽しい空間が広がるのみだった。