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「主君」
「咲良は?」
「屋敷にいることは確認しています」
……そうか。
彼女は危なっかしい。
いくらこの世界に入って10年経っていようが、外にいた者へと扱いは歴然の差だ。
父と継母のいた頃はあの屋敷にいることへの心配はなかったが、咲良ひとりになると話が変わる。
「引き続き見張っていてくれ」
「御意。それと」
手渡されたのは寮を出るための手続き書。
……確かに早めがいいと言ったが、これを屋敷に届けるように言ったのは数時間前だぞ…。
「あと数ヶ月だと言うのに、なぜ寮を出るのですか?」
「言っただろう。あの屋敷に、咲良1人だけで置いておくには危険すぎる」
立ち上がったら扉へと向かう。
「これを学園長に渡してくる」
「はい、いってらっしゃいませ」
人気の少ない廊下は足音が響くから嫌いだ。
それに、ここは無駄に目立つ。
姫条家程の名家でアルリス学園の寮になど入っている者なんて、他にいないからな。
寮の廊下を少しでも歩けば人目に触れる。
さすがに10年もこの生活をしてたら慣れるけど。



