昔々あるところに、お城のような大きなお屋敷に二人の女の人がやってきました。
ギラギラ光る服をまとった女性と、その影で不安そうな顔で怯えている女の子。
『────雅臣(まさおみ)さま、今日からよろしくお願いします』
『そんなに畏まらないでください、蘭(らん)さん。もうここは貴方の家なんですから』
幸せそうな笑顔。
新婚夫婦のお手本のような姿に女の子は心が踊っていました。
───────この瞬間までは。
ガッシャーーーんッ!!!
なぜか日常的に響き渡るガラスの割れる音。
決まって、女の子はそれが響く前には部屋に閉じ込められていました。
『飛鳥(あすか)くん?頬の怪我はどうしたの?』
『姉さん。なんでもありません』
────飛鳥くん。
女の子に新しくできた2歳年下の弟。
このお屋敷の当主であるお父さまの連れ子で、艶やかな黒い髪に色素の薄い瞳は絵本の中の王子さまのようでした。
そんな飛鳥くんはいつ見ても怪我をしていて、それはみるみるうちに増えていきます。
心配して尋ねてもはぐらかされて、距離をとられる毎日です。



