君と巡り逢えたあの景色になれるのなら

 私の前には紅葉(もみじ)がある

 一本だけどとても綺麗で今は時期だから、それは鮮やかな赤色、朱色をしている

 いつかの彼との約束を思い出す。

 私が大好きな行流(いくる)という男の子。

 一緒に紅葉見に行こうねって。

 そしてちょうど、彼はやってきた。
 
 やがて私の前まで来ると、彼は石につまずいて転んでしまう。

 その拍子にぱさり、持っていた単語帳を落とす。

 それからすぐさま立ち上がったときだった。

 私の前にある紅葉の一枚がひらり、彼の手のひらに落ちる。

 ごめんな。

 彼がぽつりそう呟く。

 と、同時に強い風がたった一枚の紅葉を遠くへさらっていった。

 しばらくその行方を目で追っていた彼だけど、やがてゆっくりと歩き始める。

 そのまま彼は私を通りすぎた。

 校門を抜けて消えてゆく彼の後ろ姿をじっと見つめ続ける。

 やっぱり気づいてくれなかった。

 でも嬉しかった。

 束の間だけど、彼と紅葉を見れたから。

 約束を守れたから。

 そしてなにより、ここは彼とのめぐり逢った場所。

 そんな場所に、私はなれたから。