スターライトパレード

控室で待機していると、ユーリがグループLINEに昨日の初詣のアルバムを上げてきた。

「椿くーん!アルバム作ったから、ここからSNS用の写真選んで!!」

共有されたアルバムを開いた瞬間、昨日の光景が鮮明に蘇る。

「やっと合流できたなー」
「みんな大変だったね」
「甘酒はお預けかな」

オレと奏はわりとうまく流れに乗れたけど、他のメンバーは列がなかなか進まず。
結局合流できたのは、カフェに入ってから一時間後だった。

「ね~ね~!奏、ツーショ撮ろ~♪」
「その着物、マジマジ見たらやばない?」
「え~、クルクルしてみて!してみて~!」

……マジマジ見んな。クソが。
クルクルって……なんで動画撮らねーんだよ。
撮れよ。撮って、巨大モニターで流せ!!

なんで奏は照れながらクルクルしてポーズ決めてんだよ……
くそっ……可愛いじゃねーか……!

その辺の防犯カメラ、データ全部オレに寄越せ!!!
頼む、マジで、切実に!!!

いいよな、あいつらは……
無邪気に撮りに行けるユーリやマオやレンが羨ましい日が来るなんて、想像してなかった。

オレなんか、合流するまでに何度『着物の下には何を着てるのか』を調べたと思ってんだ。

『下着は着けない』説、『着ける』派、『場合による』派……

全部読んだわ!!

あんな細っこい腰に、華奢な背中。
きゅっと結ばれた帯の下に、肌がそのまま触れてる可能性があるって、え、マジ?って、どんだけ妄想したと思ってる?

考えたやつ誰だよ。発明じゃん。文化の極みじゃん。
日本、ありがとう。

しかも今日の奏、髪を上げてるから、うなじが完全に無防備なんだよな……
着物と髪の間から見えるあのライン。
もう、やめろって。マジでやめろって。

この防犯カメラの映像、保存期限来る前に全部俺によこせ。
モニターに映して、1フレームずつコマ送りで見てえ。

「あー、オレが写真撮ってやるよ」

思わずユーリからスマホを受け取って、4人を撮る。
……くっそ、こいつらマジで邪魔。
オレは奏が撮りてーんだよ。

スマホ越しに見る奏と、目が合った気がしてシャッターを切る。

カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ

「ちょっ……セナ君!?!?」

……あ、やべ。思わず連写してた。

「ん、撮れたぞ」
「ちょっとーーー!!全部ボクたち見切れてるんだけど!!!???」

ユーリのクレームは完全に無視。
いつの間にか、奏と一緒に4人で写真撮影会が始まっている。

……くっそ……オレも混ぜろよ!!!

ツバキがSNS用の写真を撮るって言って、横顔やグループショットをいろんな組み合わせで撮っていく。

「じゃ、次は怜央とな」

……あの一件以来、レオとは少し距離がある。
私生活の会話も減ったままだ。

本当は聞きたいことが山ほどある。
奏とお台場で何を話したのか。
どんな頻度で連絡を取ってるのか。

でも、これ以上ダサくなりたくなくて飲み込んだ。

一通り撮り終わったころ、

「ぷっ。ほらセナも。奏ちゃんと撮ってやるよ」

と、レオがスマホを渡すよう促して来る。
……固まる。思わず、息が詰まる。

「奏ちゃん!こっち!」

着物のせいか歩幅が小さくてもうその時点で100点満点だろ……
……それすらも可愛く見えてしまう自分が、情けない。

「こっちでも一緒に撮ろ?」
「ありがとうございます。嬉しいです!」

「ナイスアシスト、だろ?」
「だからさーー、お前なんでそんなカッケーんだよ……クソッ」
「じゃ、撮るのやめる?」

「~~~~~撮るに決まってんだろ!!!」

レオに促され、奏の隣に立つ。
すぐそばにある、着物の布地の手触り。
普段の奏からはしない、ほんのりとした化粧の匂い。
少しだけ前髪を整えて、頭を傾けるような仕草。
その一つ一つに目が釘付けになる。

奏が視線を感じたのか、パッと見上げる。

ちょっとだけ見上げてくるその目。
……やば。もうちょっとで正気失う。

「そういえば……一緒に写真撮るの初めてかも」
「……そーだっけ?」
「なんだか嬉しい。すっごい素敵なお年玉をもらえた気分!」
「こんなお年玉で良ければ、何度でもやるけど?」
「それって……」

写真なんて、何千何万と撮ってきたはずなのに……
……やば。過去一緊張してるかも。

レオに聞かれるのが怖くて、少し屈んで奏の耳元で囁いてみる……

「……何度でも写真くらい一緒に撮ってやるってこと……」
「……え……あ……嬉しい……ありがとう……」

こんなんで顔赤くして照れて……マジでなんでそんなかわいーんだよ……
こんな顔も全部全部脳内にしっかり保存できたらいいのに。

次……もし奏と喧嘩するようなことがあったら、ソッコー折れよう。
1秒でも視界に入れられない瞬間があるなんて耐えられない。
もっと一緒にいたい。
一緒にいる時は、奏の全てを見ていたい。

もう奏には全敗でいいんだ。
……惚れた方が負けなんだから。

「……スマートグラス買うかな……」
「?スマート……何?」
「なんでもない……」

情けないとこばっか見せてるかもしれないけど……
お前の目に映る俺は、誰よりもカッコいいアイドルでいたいんだ。


「俺は全部入れたよ」
「僕も~」

昨日の写真が一気にカメラロールを埋め尽くす。
鮮やかな奏の着物が、その中でもひときわ目を引いた。

全部の写真を確認していたら、シンから個別で写真が届く。

井上信:すっごいベストショット!

送られてきたのは、オレと奏を後ろから撮った写真だった。
少しだけ見つめ合っていて……

奏が笑っていた。

息を呑むほど綺麗だった。

「すっごい素敵なお年玉をもらえた気分!」

……そんなん……
オレのセリフじゃねーか……