スターライトパレード

「……無理……起きれない……」

アラームの音で目を覚まし、天井を見つめたまましばらく固まる。

時刻は、午前五時。
カウントダウンの余韻がなかなか冷めなくて……眠れたのは二時過ぎ。
いつもなら、まだ夢の中にいる時間。

どうしよう……やっぱりやめて、このままベッドでぬくぬくしてようかな……
時間ぎりぎりまで寝てても、別にいいよね……?

いや!
行くって決めたんだから、行く!

布団をばっと蹴り飛ばして、勢いよく洗面台へ向かう。

午前六時二十分。
なんとか時間通りに家を出て、まだ薄暗い道をタクシーで美容室へと向かう。

「初日の出……」

車窓の外をぼんやり眺めながら、心の準備をしていく。
こんなに朝早いのに、胸だけはもうすっかり起きていた。

「おはようございます。音羽様ですね。こちらへどうぞ」
「あ……お願いしますっ」

名前を呼ばれ、奥の個室に案内される。
ドレッサーの前には、ずらりと並ぶコスメたち。
ふわりとした雰囲気のヘアメイクさんと、着付け師さんが迎えてくれる。

「髪型、どんな感じにされますか~?」
「は、はい……えっと……お任せで、お願いします……!」

普段は日焼け止めくらいしか使わない私の肌に、ファンデーションが丁寧にのせられていく。
スターライトパレードのみんながメイクを受けていた時のことを思い出して、なんだか少しだけ不思議な気分になる。
あの時は、みんな遠い世界の人みたいに見えたのに、今はこうして自分も似たような光景の中にいる。

メイクが仕上がったあとは、いよいよ着付け。
髪をアップにまとめながら、白粉の香りがほんのり漂ってきた。

「帯締めの色は、こちらの珊瑚色で大丈夫ですか?」
「はい、それで……」

白と金を基調にした振袖に、やさしいピンクの小物が差し色として添えられている。
その姿に、自然と背筋が伸びていく。
着せてもらうたびに、布の重みが心まで整えてくれるみたいだった。

「うわ……」

鏡に映る自分を見て、思わず小さく声が漏れた。

「とってもお似合いですよ」
「……ありがとうございます」

このあと、みんなと合流して、初詣に行って……
お参りするだけのつもりだったけど。

みんな、どんな顔をしてくれるかな。
遊里君は大騒ぎしそう。
真央君はいっぱい褒めてくれそう。
怜央さんはきっと、さらっと上品に言うんだろうな。

……セナ君は、どうだろう。

美容室を出るころには、空もすっかり明るくなっていた。
タクシーの窓越しに見える街は、朝の静けさを残しつつも、初詣に向かう人たちで少しずつ活気づいている。

待ち合わせは、午前八時。神社近くの大通り沿い。

あっ……あれ……
あれって……みんなだよね?

「目立たないようにしよう」って言ってた気がするけど……
いや、めっちゃ目立ってる……!
明らかに等身が違うし、服も……かっこよすぎるってば!

チラチラと気づいている人、いるんじゃない……?
これ、絶対バレる……

タクシーを少し離れた場所に止めてもらって、そっと降りる。
胸の鼓動を落ち着けながら、みんなのいる場所へと歩みを進めた。

そのとき、一瞬だけセナ君と目が合った気がした……

でも、最初に声をかけてくれたのは遊里君だった。

「えーっ!!かーわーいーい!!お姫様じゃんっ!」
「ありがとう。せっかく着物あるから、着て来ちゃった」
「あけましておめでとう。すっごい似合ってるね」
「あけましておめでとうございます、怜央さん」
「後で、みんなで撮影開始しないとだね~!」

「揃ったから、行こっか」

椿さんのひとことで、みんなで談笑しながら神社へと向かう。
誰かが笑って、誰かがつっこんで、そのたびに空気がやわらかくほどける。
私はその輪の中にちゃんと入れていることが、歩きながらじわじわとうれしかった。

けれど、神社は予想以上の混雑で……
進むたびに、ひとり、またひとりと、徐々に人の波に飲まれてはぐれてしまう。

「すみませーん!ベビーカー通しまーす!」
「うわっ、押さないで!」
「すみません、そちら側少し詰めてくださーい!」

着物のせいで身動きがとりづらくて、立ち止まることさえままならない。
やっぱり……着物、やめておけばよかったかな……
そんなことを考えていたその時、列の間をかき分けるように、一瞬だけ人の流れが大きく崩れた。