スターライトパレード

クリスマスも終わり、今度は年末年始……

久しぶりに、スターライトパレードのグループLINEが動いた。

椿翔平:カウントダウン終わったら会社の人らとそのまま初詣行くんだけど、朝から合流できそうなメンツいたら一緒に行かない?
井上信:いいね。朝からなら行けると思う
御影怜央:俺も行ける。甘酒あるとこ希望
柊真央:行く!てか絶対ぜんざい食べるからな。絶対な!!
豊田遊里:やった~~!ボクも行く~~ 着物着てこっかな~?
天野蓮:目立つからやめてくれ。一発でバレる
柊真央:てか草履なんか履いてきたら、また足痛い~とか言うんやろ?w
豊田遊里:うぅ……じゃあ耳あてだけでも可愛いのつけちゃう……
椿翔平:一応言っとくけど、SNS用の写真も撮るからそれなりの格好な
御影怜央:奏ちゃんも来年の『ヒット祈願』しにおいで?

え……行って……いいのかな?

でも、このグループで話が始まったってことは、いいんだよね?
誘われてるって、そう受け取ってもいいんだよね?

『行きたい』

少し緊張しながら、送信ボタンを押す。
たった三文字なのに、送ったあとにものすごくどきどきした。
これで空気を読めてなかったらどうしよう、とか。
逆に気を遣わせたらどうしよう、とか。
返事が来るまでの数秒が、やけに長く感じる。

……

一気に既読がつく。既読六。

まだ既読をつけていないのは……
少し、「行きたい」と送ったことを後悔しかけたその瞬間。
スマホの画面に、新たな通知が表示される。

諏訪セナ:行く

それだけ。
それだけなのに、指先の温度まで変わる気がした。

……涙腺が緩みそうになる。
きっと、冬の気温のせいだ。
友達とお揃いで買ったジェラートピケのフードをかぶって、もう一度LINEの画面を見つめた。
たった二文字なのに、どうしてこんなにうれしいんだろう。
止まっていたものが、少しだけまた動き出した気がした。

朝からずっと、テレビをつけっぱなしにしていた。
年末特番で、どのチャンネルにも見覚えのある芸能人たちの顔が並んでいる。
その中に、スターライトパレードの名前も、いくつか。

お昼のバラエティ特番では、彼らが出演する姿も放送されていた。

「ねぇちょっと!セナ君、マシュマロ入れすぎ!!」
「うるせぇ!お前も負けずに詰めろよ!」

バラエティ慣れした椿さんとセナ君がノリノリでゲームに挑戦していて、信さんはツッコミ役に徹し、怜央さんは困ったように笑っている。

遊里君と真央君も、ゲームに参加しながら無邪気に笑ったり、爆笑したり。
ふとした仕草や言葉のひとつひとつが、画面越しでもちゃんと伝わってくる。

……なんか、すごいな。

あんなにふざけていたのに、ステージに立てば誰よりもかっこいいアイドルになる。
その『ふり幅』に、毎回驚かされる。
笑いを取りにいく顔と、歌う時の顔が、まるで別人みたいなのに、ちゃんと同じ人たちだってわかるのが不思議だった。
きっと、どっちも本物なんだろう。
だから余計に、見ているこっちは簡単に振り回されてしまう。

そして、夜。

番組のスタート時間に合わせて、夕飯もお風呂も全部済ませた。
私はひとり、ソファの上で毛布にくるまりながら、テレビの前に座る。

年越しカウントダウンライブが、いよいよ始まった。
煌びやかな照明、飛び交う歓声。
出演グループたちが次々に登場していく。

昼間のテンションとは打って変わって、キメた表情に、完璧に揃ったダンス。
熱を帯びた歌声が、画面いっぱいに広がっていく。

……ほんとに、同じ人たち?

スターライトパレードのパフォーマンスが始まった瞬間、私は思わずリモコンをぎゅっと握りしめていた。

さっきまでバラエティでおふざけしてた人たちと、今ステージの上にいる彼らが、どうしても結びつかない。

いや無理……かっこよすぎるでしょ!?
その衣装、反則すぎない……!?

しかも……まって……
ファンサ、すご……

椿さん、両手ハート乱発してるし。
真央君、ウィンク三回目!!
遊里君なんて、ステップ踏みながらお辞儀してる……なにそれ。

……ていうか信さん。
その笑顔、リアコ製造機すぎて罪じゃない!?

こっちは家で死んでるっていうのに!!!

そして……

え、え?
セナ君と怜央さん……今、目が合った?
あれ、絶対アドリブでしょ!?
打ち合わせなしで、あのタイミングであの目線合わせ!?

ふたりが、ステージの端から端までを全力で駆け抜ける。
もう、あんな神演出いいの!?
考えた人、天才なの!?
いや、彼ら自身が天才なんだってば!

ド派手な炎の演出から、唐突に始まるコラボ曲。
え、この流れでこの選曲!?
ギラギラの衣装から一転、しっとりとしたバラードに切り替わって、私は息を呑む。

……これ、タダで観ていいやつなの?

どこかのグループのセンターが、ファンサでピースを送る。
その瞬間、カメラがぐらっと揺れた。

……まって、ファンサやば。
何この熱気。何このキラキラ。
本当に同じ人たち?
夕方のバラエティでハンバーグの話してたのに?

番組の最後には、毎年恒例のカウントダウン。

「五、四、三、二、一……ハッピーニューイヤー!!」

ステージいっぱいに舞い上がる銀テープと紙吹雪。
笑顔を弾けさせるアイドルたち。
画面越しでも、彼らの多幸感がまるごと伝わってくる。

私のスマホにも、「あけおめ~!」の通知がぽんぽん届く。

あ……明日は初詣……早起きしなきゃ……

眠らなきゃ。
なのに、胸が高鳴って全然眠れる気がしない。
スマホをそっと開き、さっきのステージの余韻を、もう一度だけ思い返す。

……こんな夜が、あるんだな。

静かで、でも確かに胸が熱くなる夜。
窓の外では、誰かの笑い声と除夜の鐘が、遠くで交じり合っていた。
世界中が浮き立っているみたいなのに、私は毛布の中で、ひとり静かに幸せだった。