「ナイスアシスト」
そう言って、肩をポンと叩いたレオが、走り去る奏を颯爽と追いかける。
その背中を、思わず動けずに見送ってしまった。
……アシストなんてしてねぇーーーーーよ!!!!クソが!!!!!!
何もなかったような顔をして打ち合わせをこなし、撮影も、メンバーと一緒の笑顔も、機械的にこなす。
ふと、カメラの向こう側。
撮影の順番を待つレオが視界に入る。
ここにいるってことは……レオが送ってはいない。
奏は、ひとりで帰ったんだろうな。
レオがスマホを見るたび、誰と連絡を取ってるのか問い詰めたくなる。
そんな衝動を、ぎりぎりで飲み込みながら、撮影が終わるころには、もう深夜だった。
「さむっ……」
吐き出した息が白い。やけに、心まで冷えて感じた。
久々に、どうしようもなく人肌が恋しくなった。
寒さのせいにして、気づけば足がラウンジへ向かっていた。
会員制のラウンジ。
エントランスの奥、分厚いガラス扉の向こうに広がるのは、異世界のような光景。
高層階の窓一面に、東京の夜景。
天井は高く、間接照明がソファ席ごとに『光と影』を緻密に計算して落としている。
空間に流れるのは、ジャズとエレクトロの間を縫うような、心地いい音。
どこかのテーブルで静かにシャンパンの栓が開き、グラスの軽い音が『会話の代わり』に響いていた。
15の頃、もう名前も姿も見かけなくなった業界のおっさんに連れられてこられたのが初めてだった。
あまりの非現実感に、息が詰まったのを覚えてる。
……あの頃は、毎週のように……いや、毎日のように入り浸ってたな。
女の子たちは誰もが、モデルやインフルエンサーのような出で立ち。
巻き髪、ピンヒール、ウエストを強調するワンピース。
メイクも香水も抜かりがなくて、『自分をどう魅せるか』をよくわかってる。
視線を感じて見回すと、スマホを打つ仕草、目を逸らす子、手を振ってくる子。
「来てるの、ばれてんな……」
業界の人間も多いこの店では、顔が割れてることくらい当然だ。
チラチラ視線を寄越す子。
LINEを打つ仕草、スマホをこちらに向ける手。
手を振ってきた子に、軽く笑って返す。それだけで十分。
そう、これだよ。
これが『諏訪セナ』だ。
この空間の中で、誰よりも視線を集めてる。
誰もが手を伸ばしたくなる場所にいる。
……なのに、まるで何の意味も感じない。
「ご無沙汰しております」
黒服に案内され、ソファ席へ。
耳に残る、ほんのり騒がしいラウンジの音。
久々なのに、不思議と落ち着く。
そんな中、視線が交差する。
手を振ると、女の子が近づいてきた。
「お席、ご一緒してもいいですか?」
緩い巻き髪のロング。年齢は、オレと同じか少し上くらい。
オフホワイトのニットワンピ、控えめな笑顔。
どこか育ちの良さそうな、いわゆる『清楚系』。
……でも、わかる。
目鼻立ちは整ってて、声も柔らかくて、喋り方も少しだけ甘えた感じ。
でも、ネイルは完璧。
ほんのり色づいたカラコン。
香水は、甘いバニラ系にわずかなアルコール。
照明に浮かび上がるドレスのラインは、脱いだ姿を想像させてくる『計算』が透けて見える。
「スタライのセナ君……ですよね?私、ずっと前からファンで……」
あー、そういう感じね。
中身ゼロの会話。軽い探り合いの会話。
お互いが『イケるかどうか』だけを探り合う、軽薄な時間。
彼女がもたれかかり、潤んだ瞳でこちらを見上げてくる。
……はいはい、そのパターンね。
見た目に似合わず超肉食じゃん。
「……どっか、静かなとこで休む?」
そう言って、肩をポンと叩いたレオが、走り去る奏を颯爽と追いかける。
その背中を、思わず動けずに見送ってしまった。
……アシストなんてしてねぇーーーーーよ!!!!クソが!!!!!!
何もなかったような顔をして打ち合わせをこなし、撮影も、メンバーと一緒の笑顔も、機械的にこなす。
ふと、カメラの向こう側。
撮影の順番を待つレオが視界に入る。
ここにいるってことは……レオが送ってはいない。
奏は、ひとりで帰ったんだろうな。
レオがスマホを見るたび、誰と連絡を取ってるのか問い詰めたくなる。
そんな衝動を、ぎりぎりで飲み込みながら、撮影が終わるころには、もう深夜だった。
「さむっ……」
吐き出した息が白い。やけに、心まで冷えて感じた。
久々に、どうしようもなく人肌が恋しくなった。
寒さのせいにして、気づけば足がラウンジへ向かっていた。
会員制のラウンジ。
エントランスの奥、分厚いガラス扉の向こうに広がるのは、異世界のような光景。
高層階の窓一面に、東京の夜景。
天井は高く、間接照明がソファ席ごとに『光と影』を緻密に計算して落としている。
空間に流れるのは、ジャズとエレクトロの間を縫うような、心地いい音。
どこかのテーブルで静かにシャンパンの栓が開き、グラスの軽い音が『会話の代わり』に響いていた。
15の頃、もう名前も姿も見かけなくなった業界のおっさんに連れられてこられたのが初めてだった。
あまりの非現実感に、息が詰まったのを覚えてる。
……あの頃は、毎週のように……いや、毎日のように入り浸ってたな。
女の子たちは誰もが、モデルやインフルエンサーのような出で立ち。
巻き髪、ピンヒール、ウエストを強調するワンピース。
メイクも香水も抜かりがなくて、『自分をどう魅せるか』をよくわかってる。
視線を感じて見回すと、スマホを打つ仕草、目を逸らす子、手を振ってくる子。
「来てるの、ばれてんな……」
業界の人間も多いこの店では、顔が割れてることくらい当然だ。
チラチラ視線を寄越す子。
LINEを打つ仕草、スマホをこちらに向ける手。
手を振ってきた子に、軽く笑って返す。それだけで十分。
そう、これだよ。
これが『諏訪セナ』だ。
この空間の中で、誰よりも視線を集めてる。
誰もが手を伸ばしたくなる場所にいる。
……なのに、まるで何の意味も感じない。
「ご無沙汰しております」
黒服に案内され、ソファ席へ。
耳に残る、ほんのり騒がしいラウンジの音。
久々なのに、不思議と落ち着く。
そんな中、視線が交差する。
手を振ると、女の子が近づいてきた。
「お席、ご一緒してもいいですか?」
緩い巻き髪のロング。年齢は、オレと同じか少し上くらい。
オフホワイトのニットワンピ、控えめな笑顔。
どこか育ちの良さそうな、いわゆる『清楚系』。
……でも、わかる。
目鼻立ちは整ってて、声も柔らかくて、喋り方も少しだけ甘えた感じ。
でも、ネイルは完璧。
ほんのり色づいたカラコン。
香水は、甘いバニラ系にわずかなアルコール。
照明に浮かび上がるドレスのラインは、脱いだ姿を想像させてくる『計算』が透けて見える。
「スタライのセナ君……ですよね?私、ずっと前からファンで……」
あー、そういう感じね。
中身ゼロの会話。軽い探り合いの会話。
お互いが『イケるかどうか』だけを探り合う、軽薄な時間。
彼女がもたれかかり、潤んだ瞳でこちらを見上げてくる。
……はいはい、そのパターンね。
見た目に似合わず超肉食じゃん。
「……どっか、静かなとこで休む?」
