なかなか話し合う時間を持てないまま、フランス行きの日が来てしまった。
「早くチェックインして、ラウンジでゆっくりするのでいいわよね?」
チェックインに向かおうとするパパとママの後ろを歩く。
言わなきゃ……と思っているのに、空港のざわめきに気圧されて言葉が喉につかえる。
そんな時、喧噪の中から聞き慣れた声がした。
二階から声の方向を見下ろすと――
「いた!!ね、あそこ!!」
「奏!!」
「……!みんな!!」
二階から見下ろす空港ロビー。
スターライトパレードの七人の姿。
思わず手すりから乗り出す。
「急がな……!あそこどうやっていくん!?」
「もうここでいいだろ!!」
「奏……?」
私が足を止めたのを見て、ママが戻ってくる。
「あいつら……!また……!!」
「え……!?あれ?スタライじゃない?」
「きゃーーー!!信君!!真央君!!」
「やっばい!!遊里君かわいんだけど!!」
みんなに気がつく人が、少しずつ増えていく。
ざわめきが、ゆっくり熱を持って広がっていくのがわかった。
セナ君がスマホを何か操作して、こちらを見上げる。
ピアノが流れ出す……
あの曲。
私が、Bluetoothで送った、あの曲。
私が……扉越しに弾いた曲を、セナ君たちが歌い始める。
手のひらの温度を 覚えている
僕の中 不器用だったやさしさも なぜか今は愛おしくて
まっすぐに生きるって どういうことか教わった
問いかけのたびに あなたの背中を探してる
「何これ?何かの撮影??」
たくさんの人が彼らにカメラを向け始めるのを、私はただただ上から見つめるしかなかった。
でも、耳だけは一音も逃したくなくて、必死にその歌を追いかける。
言えなかった言葉が 心の奥に溜まってく
たぶん 全部伝えたら 泣いてしまうから
あなたがくれたこの命で 僕は今日も歩いていく
涙も 迷いも すべて抱えてゆける気がする
誰かを守れるような そんな大人にいつかなれるかな
大丈夫って言えるように 僕もまた 誰かの光になる
「これも、奏が作ったのかな?」
「パパ……」
「そうか、奏らしくて綺麗な音だね。ね、薫さん」
「何よ……これ……まだまだ……全然じゃない……音の運び方も……抑揚も甘くて……」
ママには、すぐに弱点を見抜かれてしまう。
でも、その『駄目出し』をしながら最後まで聴いてくれていることに、私は気づいてしまった。
閉じたドアの向こうで 声を殺して泣いた日も
叱る声の中に ずっと祈りがあったこと
「強くなれ」って言葉が ずっと嫌いだったのに
今は僕もきっと 同じことを言うだろう
「少し……人が増えてきてしまったね。どこか静かな所に場所を移してもらおうか」
パパが職員の元へ行き、ママは一階にいるみんなを見つめている。
その横顔は相変わらず厳しくて、でも、さっきまでみたいに完全に閉じてはいなかった。
ひとりで生きてきたなんて 嘘だった
わかってる 支えられた記憶が いま僕を支えてる
「奏、移動しよう」
「でも……みんなが……」
「大丈夫、彼らも案内してもらうよう伝えたから」
あなたがくれたこの名前で 僕は僕を信じていく
どこかで見ていて 「それでいい」って 笑ってくれたらいい
まだ遠い未来だけど この胸にずっと響いてる
ありがとう そのすべてを きっと超えてみせるよ
空港中に拍手と歓声が広がっていくのを背に、パパに促され、その場を後にした。
私は何度も振り返りそうになるのを必死でこらえながら歩く。
胸の中では、まだあの歌が鳴り続けていた。
「早くチェックインして、ラウンジでゆっくりするのでいいわよね?」
チェックインに向かおうとするパパとママの後ろを歩く。
言わなきゃ……と思っているのに、空港のざわめきに気圧されて言葉が喉につかえる。
そんな時、喧噪の中から聞き慣れた声がした。
二階から声の方向を見下ろすと――
「いた!!ね、あそこ!!」
「奏!!」
「……!みんな!!」
二階から見下ろす空港ロビー。
スターライトパレードの七人の姿。
思わず手すりから乗り出す。
「急がな……!あそこどうやっていくん!?」
「もうここでいいだろ!!」
「奏……?」
私が足を止めたのを見て、ママが戻ってくる。
「あいつら……!また……!!」
「え……!?あれ?スタライじゃない?」
「きゃーーー!!信君!!真央君!!」
「やっばい!!遊里君かわいんだけど!!」
みんなに気がつく人が、少しずつ増えていく。
ざわめきが、ゆっくり熱を持って広がっていくのがわかった。
セナ君がスマホを何か操作して、こちらを見上げる。
ピアノが流れ出す……
あの曲。
私が、Bluetoothで送った、あの曲。
私が……扉越しに弾いた曲を、セナ君たちが歌い始める。
手のひらの温度を 覚えている
僕の中 不器用だったやさしさも なぜか今は愛おしくて
まっすぐに生きるって どういうことか教わった
問いかけのたびに あなたの背中を探してる
「何これ?何かの撮影??」
たくさんの人が彼らにカメラを向け始めるのを、私はただただ上から見つめるしかなかった。
でも、耳だけは一音も逃したくなくて、必死にその歌を追いかける。
言えなかった言葉が 心の奥に溜まってく
たぶん 全部伝えたら 泣いてしまうから
あなたがくれたこの命で 僕は今日も歩いていく
涙も 迷いも すべて抱えてゆける気がする
誰かを守れるような そんな大人にいつかなれるかな
大丈夫って言えるように 僕もまた 誰かの光になる
「これも、奏が作ったのかな?」
「パパ……」
「そうか、奏らしくて綺麗な音だね。ね、薫さん」
「何よ……これ……まだまだ……全然じゃない……音の運び方も……抑揚も甘くて……」
ママには、すぐに弱点を見抜かれてしまう。
でも、その『駄目出し』をしながら最後まで聴いてくれていることに、私は気づいてしまった。
閉じたドアの向こうで 声を殺して泣いた日も
叱る声の中に ずっと祈りがあったこと
「強くなれ」って言葉が ずっと嫌いだったのに
今は僕もきっと 同じことを言うだろう
「少し……人が増えてきてしまったね。どこか静かな所に場所を移してもらおうか」
パパが職員の元へ行き、ママは一階にいるみんなを見つめている。
その横顔は相変わらず厳しくて、でも、さっきまでみたいに完全に閉じてはいなかった。
ひとりで生きてきたなんて 嘘だった
わかってる 支えられた記憶が いま僕を支えてる
「奏、移動しよう」
「でも……みんなが……」
「大丈夫、彼らも案内してもらうよう伝えたから」
あなたがくれたこの名前で 僕は僕を信じていく
どこかで見ていて 「それでいい」って 笑ってくれたらいい
まだ遠い未来だけど この胸にずっと響いてる
ありがとう そのすべてを きっと超えてみせるよ
空港中に拍手と歓声が広がっていくのを背に、パパに促され、その場を後にした。
私は何度も振り返りそうになるのを必死でこらえながら歩く。
胸の中では、まだあの歌が鳴り続けていた。
