ケータリングのご飯が届く頃、スターライトパレードが出演する歌番組が始まった。
あまり他のグループをちゃんと見たことがなかったけれど、今日はなんだか目が止まった。
『mignonの皆さん、新曲「灯」を披露していただきました!』
『沙羅さん、昨年のドラマ「キスの記憶」では、スターライトパレードのセナさんとも共演されていましたよね?』
え……今、セナ君の名前……?
『現場ではどういった雰囲気でしたか?』
『ふふっ……あの時、私、誕生日が撮影中だったんですけど、セナ君がサプライズでプレゼントくれたのが印象的で』
『いや、沙羅さんが主演だったので。主役の誕生日は、盛大に祝うのが礼儀かなって』
黄色い歓声と、画面に映る仲の良さげな二人。
……何、その距離感……
「そんなに女慣れしてたら、今ここにいねぇよ」
って、言ってたじゃん……
「……嘘つき……」
普段、アイドルのセナ君は見慣れてるはずのつもりなのに。
可愛い人の前じゃ、あんな顔するんだ。
なんか、無駄にキラキラさせて……!
王子様みたいな笑顔しちゃってさ!!
ドラマは観てないけど、タイトルからして絶対イチャイチャしてるのが伝わってくるんだけど!?
これからみんながパフォーマンスするのに、私は思わずテレビから離れて、PCの椅子に移動する。
テレビからは『shooting stars』が流れる。
セナ君が選んでくれたMac。
その縁をなぞりながら、今まで彼に触れられた場所を思い出す。
腕。
手。
耳。
おでこ。
頭。
……そして、唇。
テレビの中で、別の女性を見て笑うセナ君の姿。
「私にも……もっと触れてくれても、いいのに……」
……あれ!?
なに今の!?
思わず口にした言葉に、自分で驚いて、髪の毛をぐしゃっと握る。
胸の奥がどくどくして、呼吸まで変になる。
何、今の。
私、今、何て言った?
窓に映る自分の姿を見る。
ぼさっとした髪。
部屋着。
家にこもってるせいで、余計に冴えない顔。
さっきテレビに映ってたあの子、可愛くて綺麗だったな……
スタイルもよくて、髪もサラサラで、肌も綺麗で、目が大きくて、まつ毛も長くて。
セナ君と並んで、すごく似合ってた。
美男美女って、まさにあんな感じなんだろうって……素直に思った。
私とは、全然違う。
……みんな、どんな人と恋をしてきたんだろう。
あんなに華やかな世界で、可愛くて綺麗な人と出会って、ドラマで恋人役なんてしたら……
……好きになったり、しないのかな。
考えたくないのに、考えてしまう。
セナ君だけじゃない。
怜央さんも、椿さんも、きっと今までたくさん綺麗な人たちと出会ってきたんだろう。
そんな世界を私は何も知らない。
知っているのは、画面越しのきらきらと、たまに見せてくれるやさしさだけだ。
初恋すら知らない私は、やっぱりテレビの向こうの人間なんだと、改めて思い知った。
音楽番組が終わっても、胸の中のもやもやは少しも晴れなかった。
そのまま流れるように、椿さん、怜央さん、セナ君が出演するトーク番組が始まる。
私はPCの椅子に座ったまま、テレビをぼんやり眺めていた。
番組の明るさと、自分の気分の温度差が地味にしんどい。
スタジオの笑い声が響くたび、こっちだけ取り残されているみたいで、余計に胸がざわついた。
出演者が最近買った高額なものを紹介するコーナーで、MCの人がセナ君に話を振る。
『なんかセナくん、えらい高い買い物したらしいやん?』
『……ああ、PC。機材一式』
PC……?
PCって……ひょっとして……この、私の今目の前にあるMac……?
『パソコン!? なんぼしたん!?』
『…………いや、ま、まぁ一式で……』
画面に映る金額は、約二百万円。
テロップに出たその数字に、思わず紅茶を吹き出しそうになる。
え、二百万……!?
『いや、こいつめっちゃドヤってるけど、メンバー七人での割り勘ですからね』
『おい、ばらすな!!』
椿さんのツッコミに、少しだけ救われた気がした。
でも、それでも二百万。
割り勘だったとしても、軽く受け取れる額じゃない。
そうだよね。
机も、椅子も、キーボードも、モニターも、PCも、iPadも。
あれだけ揃っていて、安いわけがなかった。
あの時は目の前の出来事に必死すぎて、ちゃんと想像できてなかっただけで。
『セナ、例のクルマのことは話さない感じ?』
『言うなバカ!!!』
\\ な~に~? //
『やめろやめろやめろっ!!! 良くない! 良くない流れだ!!』
……怜央さんの言ってた車って、あの時の?
私を乗せてくれた、あの車?
音楽番組の中で、セナ君が他の女性を見つめていたあの視線。
今、目の前にあるPC。
そこにかけられた金額。
私が知らないところで積み重なっている、セナ君たちの現実。
いろんなことが追いつかないまま、その日はなんとなく眠りについた。
眠ったはずなのに、朝起きても少しもすっきりしなくて、胸のあたりにざらざらしたものだけが残っていた。
あまり他のグループをちゃんと見たことがなかったけれど、今日はなんだか目が止まった。
『mignonの皆さん、新曲「灯」を披露していただきました!』
『沙羅さん、昨年のドラマ「キスの記憶」では、スターライトパレードのセナさんとも共演されていましたよね?』
え……今、セナ君の名前……?
『現場ではどういった雰囲気でしたか?』
『ふふっ……あの時、私、誕生日が撮影中だったんですけど、セナ君がサプライズでプレゼントくれたのが印象的で』
『いや、沙羅さんが主演だったので。主役の誕生日は、盛大に祝うのが礼儀かなって』
黄色い歓声と、画面に映る仲の良さげな二人。
……何、その距離感……
「そんなに女慣れしてたら、今ここにいねぇよ」
って、言ってたじゃん……
「……嘘つき……」
普段、アイドルのセナ君は見慣れてるはずのつもりなのに。
可愛い人の前じゃ、あんな顔するんだ。
なんか、無駄にキラキラさせて……!
王子様みたいな笑顔しちゃってさ!!
ドラマは観てないけど、タイトルからして絶対イチャイチャしてるのが伝わってくるんだけど!?
これからみんながパフォーマンスするのに、私は思わずテレビから離れて、PCの椅子に移動する。
テレビからは『shooting stars』が流れる。
セナ君が選んでくれたMac。
その縁をなぞりながら、今まで彼に触れられた場所を思い出す。
腕。
手。
耳。
おでこ。
頭。
……そして、唇。
テレビの中で、別の女性を見て笑うセナ君の姿。
「私にも……もっと触れてくれても、いいのに……」
……あれ!?
なに今の!?
思わず口にした言葉に、自分で驚いて、髪の毛をぐしゃっと握る。
胸の奥がどくどくして、呼吸まで変になる。
何、今の。
私、今、何て言った?
窓に映る自分の姿を見る。
ぼさっとした髪。
部屋着。
家にこもってるせいで、余計に冴えない顔。
さっきテレビに映ってたあの子、可愛くて綺麗だったな……
スタイルもよくて、髪もサラサラで、肌も綺麗で、目が大きくて、まつ毛も長くて。
セナ君と並んで、すごく似合ってた。
美男美女って、まさにあんな感じなんだろうって……素直に思った。
私とは、全然違う。
……みんな、どんな人と恋をしてきたんだろう。
あんなに華やかな世界で、可愛くて綺麗な人と出会って、ドラマで恋人役なんてしたら……
……好きになったり、しないのかな。
考えたくないのに、考えてしまう。
セナ君だけじゃない。
怜央さんも、椿さんも、きっと今までたくさん綺麗な人たちと出会ってきたんだろう。
そんな世界を私は何も知らない。
知っているのは、画面越しのきらきらと、たまに見せてくれるやさしさだけだ。
初恋すら知らない私は、やっぱりテレビの向こうの人間なんだと、改めて思い知った。
音楽番組が終わっても、胸の中のもやもやは少しも晴れなかった。
そのまま流れるように、椿さん、怜央さん、セナ君が出演するトーク番組が始まる。
私はPCの椅子に座ったまま、テレビをぼんやり眺めていた。
番組の明るさと、自分の気分の温度差が地味にしんどい。
スタジオの笑い声が響くたび、こっちだけ取り残されているみたいで、余計に胸がざわついた。
出演者が最近買った高額なものを紹介するコーナーで、MCの人がセナ君に話を振る。
『なんかセナくん、えらい高い買い物したらしいやん?』
『……ああ、PC。機材一式』
PC……?
PCって……ひょっとして……この、私の今目の前にあるMac……?
『パソコン!? なんぼしたん!?』
『…………いや、ま、まぁ一式で……』
画面に映る金額は、約二百万円。
テロップに出たその数字に、思わず紅茶を吹き出しそうになる。
え、二百万……!?
『いや、こいつめっちゃドヤってるけど、メンバー七人での割り勘ですからね』
『おい、ばらすな!!』
椿さんのツッコミに、少しだけ救われた気がした。
でも、それでも二百万。
割り勘だったとしても、軽く受け取れる額じゃない。
そうだよね。
机も、椅子も、キーボードも、モニターも、PCも、iPadも。
あれだけ揃っていて、安いわけがなかった。
あの時は目の前の出来事に必死すぎて、ちゃんと想像できてなかっただけで。
『セナ、例のクルマのことは話さない感じ?』
『言うなバカ!!!』
\\ な~に~? //
『やめろやめろやめろっ!!! 良くない! 良くない流れだ!!』
……怜央さんの言ってた車って、あの時の?
私を乗せてくれた、あの車?
音楽番組の中で、セナ君が他の女性を見つめていたあの視線。
今、目の前にあるPC。
そこにかけられた金額。
私が知らないところで積み重なっている、セナ君たちの現実。
いろんなことが追いつかないまま、その日はなんとなく眠りについた。
眠ったはずなのに、朝起きても少しもすっきりしなくて、胸のあたりにざらざらしたものだけが残っていた。
