スターライトパレード

私のせいで、ママはヴァイオリンを弾けなくなってしまった。
私が壊れたせいで、ママまで立ち止まらせてしまった。
そんな罪悪感だけが、毎日少しずつ積もっていった。
答えが出せないまま時が流れていったある日、

「奏……ママに、フランスのオーケストラから常任の話が来たんだ。奏は、どうしたい?」

どうしたい……?
私はどうしたいんだろう……そんなの、わかっている。
私が「一緒にいてほしい」と願ったら、きっとママはすべての仕事を捨ててしまう。
ヴァイオリンすら……きっと捨ててしまう。

……私は、ママのヴァイオリンが、世界で一番大好き。

それだけは、ほんとうだった。
自分のピアノが好きなのと同じくらい。
いや、もしかしたら、それ以上に。
ママが弾く音を、私はずっと誇りに思っていた。

「……一人になりたい。でも……ピアノとは、離れたくない……」
「……そうか。うん。パパの方で準備をするから。奏は、何も心配いらないよ」

その言葉と一緒に、パパが私の手を握ってくれた。
ママとは違う、少し大きくて、ごつごつしていて、でもそれ以上にあたたかい手だった。
その手のあたたかさに、私は少しだけ救われた気がした。

そして、ママがフランスに発つ前日……
パパは、私をとあるマンションに連れて行ってくれた。

好きなインテリアでまとめられた部屋。
一部屋は完全防音仕様で、中央には、家で使っているのと同じグランドピアノ。
一人で暮らすには広すぎるくらいなのに、なぜか怖くはなかった。
ここでなら、なんとか生きていけるかもしれない。
あの時、そんなふうに思えたのは、きっとそこにピアノがあったからだ。

「奏……」

ママがそっと抱きしめてくれた。

「大好きよ。奏が……奏のピアノが、世界で一番大好きよ」

その言葉を聞いたとき、私は泣けなかった。
泣いたら、ママが行けなくなってしまう気がしたから。
だから、ただ頷いた。
ママの胸の匂いと、抱きしめる力加減だけを、今でも覚えている。