スターライトパレード

「おじゃましまーす」
「いらっしゃい! ちょうどさっき業者さんが来て、セッティング始めてくれてるよ」

約束の時間ぴったりにやって来たセナ君を、私は部屋に通した。

「ん。これ土産」

そう言って手渡されたのは、白い紙袋。
中には、お菓子が入っていそうな上品な箱が覗いていた。

「ありがとう! 終わったら一緒に食べよ!」

紙袋をキッチンに置いてから、リビングへ案内する。
機材一式は自分の部屋に置こうかとも思ったけれど、どう考えても収まるはずがなくて……
結局、リビングの一角に全部セットしてもらうことにした。

「ノートPCも要るかな? 持ってくるね!」

そう言って自分の部屋へ向かいかけて、私はふと立ち止まる。
セナ君が部屋に入った瞬間、空気の匂いがふわっと彼の匂いに染まった気がしたのだ。
この前一緒に出掛けた時のことを、嫌でも思い出してしまう。

……顔、赤くなってないかな。

自分に言い聞かせるように深呼吸して、なんとか平静を装う。
落ち着いた頃には、セナ君が業者さんの手伝いで家具を動かしていた。

何か手伝えることはないかと思って近くに行くと、

「お前は怪我したら困るから待ってろ」

ぴしゃりと言われて、私はすごすごと下がる。
仕方なくケトルでお湯を沸かしながら、リビングの様子を眺めた。

たった今まで普通の家の一角だった場所が、みるみるうちに“音楽スタジオ”みたいになっていく。

……あそこで、作曲するんだ。

そう思った瞬間、胸の奥がむずむずした。
なんだか急に、めちゃくちゃピアノが弾きたくなってくる。
思わず小さくメロディーを口ずさむ。

このメロディー、使えるかも……

もし機会があれば、メンバーのソロ曲とかユニット曲なんかも作ってみたいな。
そんなことまで考えはじめる。

そういえば、椿さんのドラマの主題歌はどんな曲なんだろう。
もし私が同じお題で曲を作るなら、どんなものにするかな。

怜央さんなら、とびきり甘いラブソング。
信さんは、ラップの入った曲とか合いそう。
蓮君は切ないバラードをすごく歌いこなしてくれそうだし、
真央君は気合いの入ったダンスナンバーかな。
遊里君は、ポップでかわいくて楽しい曲。コーレスもいっぱい入れちゃうかも。

セナ君は……

香水みたいに爽やかで、でも少しだけスパイスが効いていて、
ちゃんとかっこよさが残る曲……

そこまで考えたところで、ふいに自分の思考に気づいてしまう。
なんでこんなに自然に、一人ひとりの声とか表情とか浮かぶんだろう。
前は、スターライトパレードのことなんてろくに知らなかったのに。

セッティングも無事に終わって、業者さんにペットボトルのお茶を渡して見送る。

さて。
……この後、どうすればいいの?

「!!! ごめん! お土産、出してなかった! お茶も! 準備してたんだった!!」

慌ててキッチンへ向かうと、後ろからセナ君の笑い声が聞こえる。
コーヒーの香りが立って、少しだけ彼の匂いが薄まった気がした。

リビングに戻って、ソファへ案内する。
でも、セナ君はなかなか座ろうとしない。

「あ! お手洗いは玄関の……」
「や、ちげーよ!!」

大きく息を吐いてから、ようやく私の隣に腰を下ろす。